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ロードバイク

飛行機輪行の準備をしていたら、自転車屋で店員になっていた

6月20日 輪行装備を揃える

数回の打ち合わせを経て、注文していた輪行装備が届いたということで、再びバイクと一緒に自転車屋さんへ向かった。店のカウンターには、輪行袋、エンド金具、油圧ディスクブレーキ用のパッドスペーサーとローターカバー、パンク修理用の携帯ポンプ、予備チューブ、工具などが並べられていた。

「前輪とペダルの外し方を説明しましょう」

店長さんに、一つひとつ丁寧に作業を教えてもらう。ペダルを取り付けるときの注意点と締め付ける力の加減。前輪を外したら、ブレーキレバーを握らないようにパッドスペーサーを入れること。ローターを傷つけないようにカバーをつけること。その他もろもろの教えを、どうにか頭に叩き込む。

説明を受けた後は、私も同じ手順で作業をしてみることになった。前輪は比較的簡単に外せたものの、ペダルの取り付けが意外と難しい。最初にねじ山へまっすぐ入れる感覚がよく分からないし、左右で回す方向も違う。ちょうど他のお客さんもやってきて、店長さんを含めた3人でおしゃべりをしながら作業を続けた。

シートポストを切る

事前に航空会社へ問い合わせて確認した預け入れ手荷物のサイズと、実際に輪行袋へ収納したバイクを比べてみると、高さが少しだけオーバーしていることが分かった。

「シートポスト、少し切っちゃいますか」

というわけで、その場で切ってもらうことになった。飛行機に乗せるために、自転車の一部を切ることになるとは思わなかった。とはいえ、サドルの高さを調整する余裕は十分に残るとのことなので、特に問題はないらしい。

すごい雨具が出てきた

「そういえば、台風が来ていますよね。自転車用の雨具ってあるんですか?」

私が尋ねると、店長さんがニヤリとした。

「すごいのがあります」

そう言いながら出してきたのは、ずいぶん薄くて、ぺらぺらしたレインウェアだった。GORE-TEXなので、それなりの値段は覚悟していた。それでも値札を見てぎょっとする。こんなに薄い生地なのに、登山用のハードシェルレインウェアと同じくらいの価格である。

しかし、袖を通してみて認識を改めた。伸縮性があり、とんでもなく軽い。身体を動かしても突っ張らず、空気がこもるような感覚もない。これは、すごいかも。
ポケットの位置などを確かめていると、コップを持った店長さんが近づいてきた。

「腕を出してください」

言われるまま腕を前に出すと、店長さんは何のためらいもなくコップの水をかけてきた。水は生地の表面で玉になり、そのまま流れ落ちていく。撥水性能も十分そうだ。

「かなり軽くて小さくもなりますし、肌寒ければ上着代わりにもなりますよ。防水なので、汚れても濡れたタオルで拭けばきれいになります」

こうして、信頼できそうな雨具も手に入れた。

家でひたすら分解する

家に帰ってから、2時間ほどバイクを分解して輪行袋に入れ、また組み立てる作業を繰り返した。外して、入れる。袋から出して、組み立てる。また外して、入れる。何度か繰り返しているうちに、少しずつ作業の順番が頭に入ってきた。

そうこうしているうちに雨が降ってきたので、さっそく購入したレインウェアを着て走ってみることにした。雨の中へ進んで自転車に乗るなんて、生まれて初めてである。

しかし、このレインウェアはすごい。雨水はきちんとはじいているのに、全然暑くない。むしろ少し寒いくらいだった。上着代わりにはなると言われたものの、ウインドブレーカーのように風を止めるものではないらしい。それくらい通気性がある。

少し試すつもりが、結局20km走ってしまった。

6月21日 もう一度練習する

翌日、作業手順が正しいか見てもらうため、もう一度自転車屋さんへ向かった。店の前でバイクを分解していたため、来店したお客さんに店員と間違えられた。
最初のうちは、そのたびに「すみません、店員ではないんです」と説明していた。しかし、だんだん面倒になってきたので、「受付は店内でやっています」と案内することにした。
もういいや。

リアディレイラーも外す

お客さんが落ち着いた頃、店長さんにもう一度作業を見てもらった。

「めちゃくちゃ作業早くなりましたね」

店長さんは笑いながら続けた。

「リアディレイラーも外せるようになっちゃいましょうか。その方が安心なので」

飛行機で運ぶ際、一番外側へ張り出しているリアディレイラーは、衝撃を受けやすいらしい。万が一ぶつけられて折れてしまえば、現地で走れなくなる可能性もある。そういうわけで、今度はリアディレイラーの取り外しと取り付けも練習することになった。

また覚える作業が増えた。

ハマっちゃってるねぇ

リアディレイラーを外したり取り付けたりしていると、マウンテンバイクに乗ったお客さんがやってきた。

「あれ、輪行ですか?」

「はい。今月末に佐賀へ行くんです」

「え、台風来てません?」

「来ていますね。まあ、数日滞在するので、どこかで過ぎ去ってくれれば」

そんな話をしていると、店長さんもやってきた。

「先月から乗り始めたと思ったら、ツルつくに出て、今月は輪行だって」

ツルつくというのは、ツール・ド・つくばのことである。どうやらそのお客さんは常連さんらしい。

「あーあ。ハマっちゃってるねぇ」

お客さんも笑う。そうこうしているうちに、ほかのお客さんも来店し、店内がにぎやかになってきた。

「正直、初めてツルつくに出るって聞いたときは、登り切れると思ってなかったんですよね。そしたら、一回脚をついちゃったって言って帰ってくるんだもん。本番なんて1時間切ってくるし。で、今度は輪行でしょ」

店長さんに大笑いされた。

自転車が増えていく理由

「輪行するなら、カーボンフレームより鉄のフレームがいいよ。ぶつけても、へこむだけだしねぇ」

お客さんがそう言うと、店長さんも笑いながら続ける。

「そうそう。最悪、溶接できますし」

「そうやって自転車が増えていくんだよね。マウンテンバイクはやらないの? 楽しいよ。このバイクに乗って、店の周りを一周してきなよ」

そう言われて、お客さんのマウンテンバイクに乗せてもらうことになった。電動式らしく、ハンドルのボタンを押すとサドルの高さまで上下する、とんでもない高級品である。
私のロードバイクなら絶対に避けるような段差へ進んでも、サスペンションが衝撃をほとんど吸収してくれる。なんて快適なんだろう。
店の周りを一周しながら、こんな世界もあるのかと衝撃を受けた。

いやいや、まだ自転車を増やすのは早いぞ。そう自分に言い聞かせながら、店へ戻った。

新しいことを始めるというのは、何度やっても不思議なものである。それまでなら恐らく一生出会わなかったような人たちと、何の気なしに出会うことが日常になってしまうのだ。

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