三脚にのせたカメラのセルフタイマーをセットして、走ってみんなの輪に飛び込んで集合写真を撮る、なんてことも減った。
カメラマンの表情というのは、たいてい上がる呼吸を必死にこらえていたり、ひとりだけ後から走りこんでいるのでちょっと浮いていることが多かった。周りから、ここに入れとうながされている情景がそのまま撮影されたりしてしまっても、それはそれで悪くない写真だと思う。
でもそんなのは昔のお話だ。
撮影スタイルによっては、一生使わない可能性だってある三脚という装備。今はもう、カメラを始めるならとりあえず三脚も買っておけ、という時代ではないだろう。
と言いつつ、実は私、結構な頻度で三脚を使用している。
先日、このサイトを見て頂いた方に、「三脚って必要ですか?」という質問を頂いたので、私なりのお話を残しておこうと思う。
目次
三脚は何のためにあるか
ざっくり言ってしまうと、三脚とは自分でカメラを持ちたくない人が使う装備だ。と、思っている。
カメラとレンズの性能向上によって、無ければ撮れない写真というのは昔に比べれば確実に減っているのは間違いないのだけど、自分の手でカメラを持ちたくないという状況にはあまり変化がないように思う。
例えば、思い通りの画角を維持したまま長時間露光や多重露光、試行錯誤をしたいとき。あるいは、とんでもなく重いカメラとレンズ、スピードライトなんかをつけて撮影する場合は、たとえブレなくても手で持ちたくない。仕事などで撮影時間が限られていればなおさらだ。
たいていの状況では創意工夫と時間をかけた努力で、三脚なしでも撮影はできるのだけど、四の五の言わずに三脚を使った方が無難。
カメラを同時に複数台、自分でコントロールしなければならなかったり、赤道儀を使ったり、そもそも手持ちで使用することを想定されていないような望遠レンズで動き回るものを撮影するときなんかは使う他ないだろう。
三脚が必要ない場合
一般的に手振れしない安全なシャッタースピードというのは、1/x秒(x=焦点距離)と言われている。
例えば50mmのレンズを使うなら1/50秒までなら手振れすることはありませんよ。という話。
でもこれは、少し訓練すればもっと遅いシャッタースピードでもブレずに撮影することは可能だ。
私がメインで使用しているAF-S NIKKOR 58mm f/1.4Gというレンズも、手振れ補正はついていないが1/15秒くらいなら躊躇せずにシャッターを切ってしまう。手振れすることはまずない。
むしろ、あまりシャッタースピードが遅くなると、手振れよりも被写体ブレを気にしなければならなくなることの方が多くなる。
また、望遠ズームではAF-P NIKKOR 70-300mm f/4.5-5.6E ED VRというレンズを使用しているが、このレンズは4.5段の手振れ補正機能が付いており、日中の運動会撮影くらいではまず三脚は必要ない。
私が三脚を使うとき
室内での物撮り
このサイトで使用している写真は、室内でマクロレンズを使用していることが多い。
ほとんどの写真は三脚なしで撮影してしまっているが、試行錯誤したいときは三脚を使っている。
例えばこの写真はAF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G EDという手振れ補正機能のないレンズで、f/8.0(実効F値)、1/50秒で撮影している。
この程度なら三脚はなくても手振れはしないが、万年筆のペン先にピントを合わせつつ、画角も気にしながら照明などを試行錯誤をするとなると、三脚なしでは結構面倒な作業になる。
クリップなしにハンダ付け作業をするようなもんだ。
ピントを合わせる部分が小さいと、オートフォーカスが合わず、マニュアルでピント調整することが多い。また、マクロレンズで被写体を至近距離で撮影しようとすると被写界深度が浅くなるため、ピント面が1mm単位になる。ブレていなくてもピントが合っていない、なんてことが起こる。
また、不安定な姿勢で撮影する場合。
この写真は机の上を真上から撮影している。こういった写真をきちんとした画角で撮影しようとすると、カメラの位置が高すぎて、もはや踏み台なしではまともにファインダーを覗けないような状況になる。
こういう時は三脚と、ギア雲台を使用する。
ギア雲台とはこういうもの。各軸をギアで微調整できる。
自由雲台でも水平方向の撮影なら力技で微調整も可能だが、垂直方向の微調整はかなりしんどい。素直に適切な機材を使った方がラクなのだ。
自撮り・集合写真
スマホであれば自撮り棒を使ったり、自分の手に持ったまま撮影することも可能だが、一眼レフだとなかなかそうもいかない。
なにより、個人的にセルフタイマーをかけて、走ってみんなの中に飛び込んで集合写真を撮るというのが結構好きだ。
昨年写真コンテストに入選したこの写真も、まさかの自撮りなので三脚を使っている。
Manfrotto 190go! M-lock
私が使用しているメインの三脚。
4段のツイスト式ロックで、最低高9cm、全伸高152cm。最大耐荷重は7kg。脚径は26mmで一眼レフ用としては最低限の部類だと思う。
収納時は45cm(雲台を装着すると50cm程度)。普段はTRIPLE TREEという聞いたことのない中華メーカーの自由雲台を装着している。
この後ご紹介するミニ三脚と比較すると大きいのだけど、通常の三脚としてはコンパクトな部類ではないだろうか。
一度、割とちゃんとした3ウェイ雲台を移動中にひっかけて壊して以来、プライベートでは引っかかりのないコンパクトな自由雲台を使っている。
ローアングルと俯瞰撮影が可能で、アルミモデル。雲台込みで2037g。本体のみで1707.5g。まぁ特別軽くはないが、持ち運びが苦になることもない重量。
こだわりがないならこれでイイ
どうしても軽量化にこだわるのであれば、+1万でカーボン製にすればよいし、三脚としての性能にこだわるのであればいくらでも高価な三脚はある。とはいえ、ただカメラを固定しただけならこのクラスで十分だと思う。
目立ったガタつきもないし、ツイスト式のロックにしては少ない回転角でしっかり固定できる。高価なものに比べれば操作性は劣るが、私の場合、一分一秒を争うような場面で三脚を使うことはまずないので問題ない。
どちらかと言えば、三脚よりも雲台にこだわった方が幸せになれる人が多いと思う。
安価な三脚ではだめなのか
こだわりがない限りは、三脚というのは高価である必要はないと思う。
ただし、耐荷重は注意した方が良いだろう。高価なカメラとレンズを安い三脚にのっけて、倒れて壊すくらいなら、それ相応の三脚を使おうというお話だ。心配であれば有名メーカを選択すればよい。
また、室内でプライベートの物撮りしかしない、三脚の設置にいくら時間がかかっても良い、というのであれば持ち運びが苦になる重さや操作性に難があるけど、しっかりしていて安い三脚は中古でも手に入る。
Leofoto MT-03+LH-25
私が常にカバンに突っ込んでいるミニ三脚。
カメラをやる知人には会うたびに自慢してしまうのだが、このミニ三脚、すごいのだ。
材質はアルミニウム。段数は2段だが、根元の開脚角度 は35°、 55°、 85°で固定可能。各角度でしっかり固定できる。
収納高は143mm。全伸長は180mmで最低高30mm。
耐荷重量はなんと5kgだ。私の使用するNikon D850にAF-S NIKKOR 24-70mm F2.8E ED VRというそれなりの重量仕様でも安定して自立する。
そして付属する雲台も作りが良い。雲台の耐荷重は6.0kgなので問題ない。こだわる人からすれば不満点もあろうが、コレ、ミニ三脚だからね。
重量は雲台込みで333g。ミニ三脚としては重いかもしれないけど、私は重いカメラをのせるので、これくらいの自重がないと自立しないと思う。
こんな感じで全開にしてしまえば、通常の三脚では届かない低いアングルでも安定して撮影できる。
細かいけど大切な点として、三脚取付ネジはUNC3/8"-16なので、たいていの雲台は取付可能。
もしもの時の携帯三脚
日常的に一眼レフと交換レンズを携帯している私も、通常サイズの三脚となると常に持ち歩いているわけではない。
重いというのももちろんあるが、長物を持ち歩くことで制限される動作や安全管理のしにくさを考えると、本当に持ち歩かなければならない状況というのは、どうしても限られてくる。
それでも、カメラを持っている者の宿命として、時折集合写真を撮ろうというときに視線が自分に集まることがある。
「お前のそのデカいカメラの出番だろ」という無言の重圧だ。
そんなときに三脚がないと情けないことになる。苦し紛れに「オレのことはいいから、みんなの写真撮ってあげるよ」と言っても、結局は誰かのスマホでも撮影することになったりする。
何度かそういった目にもあい、今ではほぼ常にカバンにこの三脚が入っている。
卓上三脚として
今のところ、リモートワークのカメラにデジタル一眼を使うようなことにはなっていないし、YouTuberになる予定もないが、自宅でZoomやSkype、Dicordなどのアプリを使用してお話をするときは、この三脚にショットガンマイクを装着して使用している。
卓上の空いたスペースにおいて、自由な方向に角度調整できるので単純に便利。
さいごに
三脚のススメのような記事になってしまったけど、三脚自体を買うかどうか迷っているようであれば、まず自分が何を撮影するのかを冷静に考えるべきだろう。
とりあえず欲しい、というのであれば、使わなくなっても腐る可能性の低いミニ三脚から始めてみるのも良いかもしれない。