AF-S NIKKOR 58mm f/1.4Gをメインレンズにして1年以上たったので、レビューしてみたいと思います。
目次
購入の経緯
1年前、とある事故で自宅のデジタルカメラ機器が故障し、メイン機材をNikon D850に更新しました。
銀塩時代から通算10年以上写真をやってきて、自分が使用するレンズの焦点距離は35~105mmであることがわかっており、単焦点であれば50mmを主に使用していました。
ただ、50mmを使用していると、少し足ズームが足らず、結果的に少しトリミングすることもあったりして、反省することもしばしば。
そんな経緯もあり、このAF-S NIKKOR 58mm f/1.4Gを見つけたとき、「この焦点距離は自分にピッタリかも!」と、特によく調べもせず、最新の単焦点レンズであれば間違いはないでしょうと、AF-S NIKKOR 24-70mm F2.8G EDとともに何気なく購入。
しかし、今どきのレンズとは思えないじゃじゃ馬っぷりにすっかり魅了され、今ではメインレンズです。
結果オーライでしたが、レンズを買うときは事前に調べた方がいいですね…。
実写レビュー
まずは気になるf/1.4の作例。
いずれもD850での撮影、未編集(JPEG)です。
いかがでしょう。
大三元のAF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VRも、普段から使用していますが、ちょっとこの感じ、ズームレンズでは出せないです。F値が違うので当然ですが。
周辺の光量落ちも個人的には許容範囲。背景が空だったりするとわかりますが、わからないことも多いです。
ところどころ、パープルフリンジや緑色の偽色が出ていますが、時にそういった現象が立体感を生むこともあったりして、あえて修正しないことも多いです。
この不思議な空気感は、f/2.2あたりを境に弱まり、f/2.8あたりまで絞ると、AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VRあたりの高性能ズームレンズの写りに近づいていきます。
口径食
f/1.4で雨降りの車内からフロントガラスを撮影。
画像の中心から外縁にに向かうにしたがって、だんだんとボケが歪んで言っているのがわかると思います。
この口径食というのもどうとらえるかが問題で、Lightroomのレンズ補正などで緩和できたりするのですが、個人的には大好きなレンズの個性です。
細かい木漏れ日を背景にポートレート撮影をしたりすると、被写体に向かって吸い込まれるような空気感の写真が撮影できます。
この口径食も、f/2.2~2.8で落ち着きます。
ピント面の描写
レンズを購入して、早速自室で撮影してびっくりしたのですが、近距離絞り開放で撮影すると、被写界深度が消失するというか、どこにもピントが合っていないような印象を受けます。
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こんな感じですね。一応シャッタースピードは1/640秒なので、手振れではないと思います…。
ですが、少し離れて撮影すれば、そこまで気になることはありません。
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これくらい離れて撮影すると、ピントの甘さは目立たなくなります。
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あえてピントを手前に合わせて撮影していますが、これくらいなら許容範囲ではないでしょうか。
そもそも、このレベルの描写性能の機微は、等倍で画像を確認したり、四つ切以上のサイズでプリントしたりしない限り、あまり気にならないと思うんですよね…。
もうここまでくると、趣向の問題な気がしますが、このピントの甘い感じも、やはりf/2.2~f2.8で完全に抑えることができます。
また、絞り解放でもピントの描写が甘くならない距離感をつかむことが大切になります。
パープルフリンジ
撮影していて気が付いたのですが解放よりで明暗の激しい写真を撮影をすると、盛大なパープルフリンジが出ます。
これは意図的にフリンジを出してみました。
これは、覚悟のうえで撮影したもの。緑色の偽色が出ています。
f/1.4での撮影ですが、ちょっとえぐいですね。Lightroomで簡単に修正はできますが。
ただ、少し絞ると、消えます。上の写真はf/6.3ですが、f/2.8程度でも十分に消えます。
こういったレンズ性能的な部分に敏感な方には結構ショッキングかもしれませんが、いくらでも修正は効きますし、こういった特性も踏まえて撮影するのが個人的には楽しいと感じています。
緑色の偽色が結構好きで、場合によって、あえて残すこともあります。
絞れば高解像度
解放付近では魅力的な表現と引き換えに、色収差や解像度など、大暴れなレンズですが、絞って撮影すると別物のレンズになります。
この写真はf/8.0ですが、このあたりのF値から、かなりの高解像度で風景などの撮影が可能になります。
絞ることを前提に使用するのであれば、正直ほかにもいくらでもレンズの選択肢はありますし、AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VRなどのズームレンズの方が便利です。
あくまで、58mmという焦点距離で、解放での表現と、絞った時の優等生さが両立できている、というところが個人的に魅力を感じている点です。
重さを量ってみよう
裏蓋、レンズキャップ、フィルターなし、フードを付けた状態で413g。軽いですね。
ちなみに、フードを外すと381gでした。
AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VRは1127gあるので、比べるとおもちゃのような感覚すら覚えます。
外観と操作性
D850に装着時の外観です。
D850はそれなりに大きいフルサイズ一眼レフなのであまり違和感はありません。
操作性に関してですが、フォーカスリングは適度な抵抗感とスムースな感触で、使いやすいです。
個人的に唯一残念なことに、オートフォーカスが非常に遅いので、たまにマニュアルフォーカス、置きピンを使うことがあります。
オートフォーカスが早ければ完璧なのですが、フォーカスリングの操作性は救いです。
動きものを絞り解放で撮影する場合はちょっとスキルが必要かもしれません。
また、レンズがだいぶ奥まって配置されているので、ナノクリスタルコートといえど、安いフィルターを使用するとゴーストやフレアなど、写りに影響が出るかもしれません。
私は普段、KenkoのPRO1D LotusII プロテクター 72mmを使用しています。プロテクター以外はNisiのフィルターですね。
それなりに高性能なフィルターを使用することをおすすめします。
絞り開放を多用するなら、NDフィルターやPLフィルターを使用する必要があるかもしれません。
すべては、レンズの特性をどうとらえるか
少し長くなりましたが、すべては絞り解放付近でのこのレンズ特性をどうとらえるか、ということに尽きるかと思います。
この少し不思議な単焦点レンズは、f/2.2からレンズ特有の描写、癖が薄れ、f/2.8まで絞ればただの優秀な単焦点レンズになってしまいます。
自然な周辺減光、口径食、ピント面の描写性能といった特性を、被写体との距離や絞りでコントロールし、明暗差を考慮しながら思ったような写真を撮影できるようになると、もう便利で優秀なだけのズームレンズには戻れない中毒性があります(いまだに思ってもみない写真が撮れたりするのも使っていて楽しいところなのですが)。
レンズに万能で優等生な性能を求める方にはおすすめできませんが、このレンズの特性というのは、本来カメラのレンズに大なり小なり存在しているものです。
この特性を活かすにしても、抑え込むにしても、ある程度撮影の基礎知識が必要だったりするので、写真の勉強にも適したレンズと思います。