
『台湾漫遊鉄道のふたり』 楊 双子 (著), 三浦裕子 (翻訳) には、台湾各地の料理、菓子、飲み物が数多く登場する。
華やかな台湾料理店の宴席から、市場の屋台、汽車の中で食べる菓子、家庭で食べる麺や粥まで、その種類は幅広い。食べ物をたどると、登場人物たちが台湾をどのように移動し、どの土地で誰と食卓を囲んだのかも見えてくる。
この記事では、第一章から第十二章までに登場する食べ物を、地名とともに整理する。
料理名は原則として、次の順序で表記した。
台湾華語の繁体字表記/漢語拼音/カタカナによる発音の目安
これは、実際に現在の台湾で自分の発話で持って同じ料理を探すためだ。
本書の表記と現代の一般的な表記が異なる場合は、両方を掲載してみた。台湾語や客家語に由来する料理名についても、この記事では台湾華語による表記と説明を基本とした。
※本文中の「内地人」「本島人」は、日本統治期に用いられた呼称である。本記事では、作品内の記述を紹介する場合に限って使用する。
この記事では台湾華語を勉強中の筆者が、書籍内では1938年当時話されていた台湾語、一部客家語で話されていた発音のルビを現在勉強中の台湾華語(國語)でどう発音されているかを調べて記載している。なにぶん勉強中の為、間違いがある可能性があるため、その点は注意してほしい。また、これは筆者の個人的な学習ノートなため、予告なく内容を改定する可能性がある旨、ご了承いただきたい。
目次
第一章「瓜子」――瓜の種
新竹駅|炒米粉
炒米粉/chǎo mǐfěn/チャオ・ミーフェン
新竹駅では、炒米粉が登場する。米粉は米から作る細い麺で、具材とともに炒めて食べる。
作中では「蕎麦を炒めたようなもの」と説明されるが、実際に食べてみると、想像していた蕎麦とはまったく違っていたと描かれている。
日本語の「米粉」からは粉そのものを想像しやすいが、台湾でいう米粉は麺を指す。
(23頁)
干城橋通り|瓜子
瓜子/guāzi/グアズ
章題にもなっている瓜子は、瓜類やヒマワリなどの種を炒った食べ物である。殻ごと食べるのではなく、殻を割って中にある仁を食べる。
作中では、瓜子を初めて見る内地人に対し、「中の仁を食べるのです」と食べ方が説明される。
瓜子は料理というよりも、話をしながら少しずつ殻を割って食べる間食である。
(26頁)
台中の市場|青草茶、愛玉、粉粿、粉圓
青草茶
青草茶/qīngcǎochá/チンツァオチャー
青草や薬草を煮出して作る飲み物。作中では「本島人の飲み物」と説明されている。
愛玉
愛玉/àiyù/アイユィ
愛玉子の種を水の中でもむことで固める、透明感のあるゼリー状の甘味。
粉粿
粉粿/fěnguǒ/フェングオ
でんぷん質の材料を固めて作る、餅とゼリーの中間のような甘味。作中では「半透明の薄い黄色をした、おやつのようなもの」と描写されている。
粉圓
粉圓/fěnyuán/フェンユエン
でんぷんから作る小さな丸い粒。作中では「黒くて小さいつぶつぶのもの」と説明されている。現在のタピオカ系の食品につながる。
青草茶、愛玉、粉粿、粉圓は、どれも華やかな宴席料理ではない。市場の屋台で売られ、暑さや空腹をしのぐために口にする、街の日常に近い食べ物である。
(30頁)
台中州庁近くの梅春園|内地人をもてなす台湾料理
梅春園/Méichūnyuán/メイチュンユエン
台中州庁近くにあった梅春園は、内地人をもてなすために使われる台湾料理店として登場する。
烏魚子
烏魚子/wūyúzǐ/ウーユィズ
ボラの卵巣を塩漬けにして乾燥させた食品。日本のカラスミ。
豬腳魚翅
豬腳魚翅/zhūjiǎo yúchì/ジュージャオ・ユィチー
豚足のフカヒレ詰め煮込み。
紅燒鱉魚
紅燒鱉魚/hóngshāo biēyú/ホンシャオ・ビエユィ
スッポンを醤油や調味料で煮込んだ料理。
清湯香螺
清湯香螺/qīngtāng xiāngluó/チンタン・シアンルオ
つぶ貝(巻貝)を澄んだスープで仕立てた料理。
生炊蟳飯
生炊蟳飯/shēngchuī xúnfàn/ションチュイ・シュンファン
殻付きの蟹のおこわ。「蟳」は蟹、特にワタリガニ類を表す字。
炒八寶菜
炒八寶菜/chǎo bābǎocài/チャオ・バーバオツァイ
肉、魚介、野菜など、複数の材料を取り合わせて炒めた五目炒め。
杏仁豆腐
杏仁豆腐/xìngrén dòufu/シンレン・ドウフ
杏仁の香りを生かした、なめらかな甘味。
八寶甜飯
八寶甜飯/bābǎo tiánfàn/バーバオ・ティエンファン
ドライフルーツのせ甘い蒸しおこわ。
珈琲と包種茶
咖啡/kāfēi/カーフェイ
包種茶/bāozhǒngchá/バオジョンチャー
宴席の最後には、珈琲と包種茶が出される。
(32頁)
場所不明|鹹蜊仔
鹹蜊仔/xián lí zǎi/シエン・リーザイ
シジミなどの小さな貝を、醤油や塩を使った調味液に漬けた保存食。
作中では、美島が内地人に買ってあげたものの、それを食べた内地人が食あたりを起こした食べ物として語られる。
(37頁)
第一章で見えてくる台湾の食
第一章には、街角の軽食、市場の甘味、台湾料理店の宴席という、異なる食の場が描かれている。
第二章「米篩目」――米粉の太うどん
柳川橋の家|米篩目
本書の表記:米篩目
現代の一般的な表記:米苔目/mǐtáimù/ミータイムー
米を原料にした生地を押し出して作る、太く短い麺状の食品。
作中では「本島人はおやつに米篩目を食べるんですよ」と説明される。
米篩目には甘くして食べるものと、塩味のスープに入れて食べるものがある。本章では、具材をのせた食事としての米篩目も登場する。
(56頁)
柳川橋の家|黑葉荔枝
黑葉荔枝/hēiyè lìzhī/ヘイイエ・リージー
黑葉はライチの品種名である。
作中ではライチを食べながら、台湾の四季と果物の豊かさが語られる。
(59頁)
柳川橋の家|しょっぱい米篩目の具材
肉臊
本書の表記:肉臊
現代の一般的な表記:肉燥/ròusào/ロウサオ
細かくした豚肉を醤油などで煮込んだ甘辛い肉そぼろ。
油蔥酥
油蔥酥/yóucōngsū/ヨウツォンスー
紅蔥頭(赤い小玉ねぎ:エシャロット)などを刻み、油で香ばしく揚げた薬味。
滷蛋
滷蛋/lǔdàn/ルーダン
ゆで卵を醤油や香辛料を使った煮汁で煮込んだもの。
滷丸
滷丸/lǔwán/ルーワン
肉団子などの丸子を煮汁で煮含めたもの。
作中では、これらをしょっぱいスープの米篩目にのせる具材として説明している。
台南や高雄のあたりでは、魚や牡蠣を具にすることもあるという。
(64頁)
第二章で見えてくる台湾の食
米篩目は、甘味にも食事にもなる米食である。
同じ米篩目でも、肉燥や滷蛋をのせる土地もあれば、魚や牡蠣を使う土地もある。料理名が同じでも、地域によって具材や食べ方が変わることが示されている。
第三章「麻薏湯」――黄麻の葉のスープ
売り子の少年|土豆
土豆/tǔdòu/トゥードウ
台湾では、土豆は落花生を指す。
作中では、売り子の少年が売る茹で落花生として登場する。
(67頁)
彰化市内・高賓閣酒家|宴席料理
高賓閣/Gāobīngé/ガオビンゴー
彰化市内の映画館を訪れた後、高賓閣酒家で食事をする。
川湯蝦
川湯蝦/chuāntāng xiā/チュアンタン・シア
海老を湯やスープで仕立てた料理。
蔥燒雞
蔥燒雞/cōngshāo jī/ツォンシャオ・ジー
葱と鶏肉を煮焼きにした料理。
什錦魚羹鍋
什錦魚羹鍋/shíjǐn yúgēngguō/シージン・ユィゴングオ
魚の五目とろみスープ。
冰糖蓮子
冰糖蓮子/bīngtáng liánzǐ/ビンタン・リエンズ
蓮の実を氷砂糖で甘く煮た料理。
(68頁)
彰化市街の純喫茶|麻薏湯
麻薏湯/máyìtāng/マーイータン
黄麻の若い葉を使った、台中地域の家庭料理。
独特の苦みと粘りがあり、作中では「麻薏湯は美味しくはありませんよ。市場でも売られていません」と説明される。
(75頁)
柳川橋の家|鹿港名産の丸子
水晶餃
水晶餃/shuǐjīngjiǎo/シュイジンジャオ
透明感のある、でんぷん質の皮で餡を包んだ食品。
扁食燕
扁食燕/biǎnshíyàn/ビエンシーイエン
豚肉と小麦粉から作る薄い燕皮で、肉餡を包んだもの。
蒸丸
蒸丸/zhēngwán/ジョンワン
蒸して仕上げる肉団子。
水丸
水丸/shuǐwán/シュイワン
スープなどに入れて食べる肉団子。
芋丸
芋丸/yùwán/ユィワン
タロイモを使った団子。
作中では、水晶餃、扁食燕、蒸丸、水丸の四種の肉団子と、タロイモの芋丸が鹿港名産として紹介される。
(93頁)
第三章で見えてくる台湾の食
高賓閣の宴席料理、家庭で作る麻薏湯、鹿港の加工食品が一つの章に並ぶ。
同じ台湾の食であっても、酒家で客に見せる料理と、家庭内で受け継がれる料理、地域の職人が作る食品では、食べられる場所も意味も異なっている。
第四章「生魚片」――刺身
川端町の家の近く|糖蔥
糖蔥/tángcōng/タンツォン
糖を煮詰め、何度も引き延ばして作る飴菓子。内部に細かな空洞があり、さくさくとした食感を持つ。
(98頁)
柳川橋の家|麵茶と麵線
麵茶
麵茶/miànchá/ミエンチャー
小麦粉などを炒って香ばしくし、湯を加えて飲む、または粥状にして食べる食品。
麵線
麵線/miànxiàn/ミエンシエン
非常に細い小麦麺。
(101頁)
柳川橋の家|麺と潤餅
炒米粉
炒米粉/chǎo mǐfěn/チャオ・ミーフェン
米粉を具材とともに炒めた料理。
湯冬粉
湯冬粉/tāng dōngfěn/タン・ドンフェン
春雨をスープに入れた料理。
煮大麵
煮大麵/zhǔ dàmiàn/ジュー・ダーミエン
太めの小麦麺を煮た料理。
潤餅捲
潤餅捲/rùnbǐngjuǎn/ルンビン・ジュエン
薄い小麦粉の皮で、野菜、肉、豆類などの具材を巻いた生春巻きのような食品。
(102頁)
柳川橋の家|蛋酥
蛋酥/dànsū/ダンスー
卵液を油で揚げ、細かく崩したもの。単独の料理ではなく、料理を構成する食材の一つとして登場する。
(103頁)
柳川橋の家|膎
本書の表記:膎
台湾華語での説明:醃漬魚肉/yānzì yúròu/イェンヅー・ユィロウ
魚、海老、肉などを塩漬けにした保存食。
「膎」は台湾語に由来する言葉であり、台湾華語では、塩漬けにした魚肉や保存食として説明できる。
(104頁)
嘉義の旅館|熝湯糍
本書の表記:熝湯糍
現代の一般的な名称:牛汶水/niúwènshuǐ/ニウウェンシュイ
もち米で作った団子を、ショウガを利かせた甘い汁で煮て、落花生粉などをかける客家の甘味。
作中では、客家人の祝い事に関係する食べ物として紹介される。
(113頁)
嘉義の旅館|午魚と白鯧の刺身
午魚
午魚/wǔyú/ウーユィ
台湾で食用にされる魚。ミナミコノシロ
白鯧
白鯧/báichāng/バイチャン
白身の海水魚。マンジュウダイ
佛手瓜
佛手瓜/fóshǒuguā/フォーショウグア
ハヤトウリ。旅館の夕食に出された野菜。
嘉義の旅館|客家料理をめぐる会話
豬膽肝
豬膽肝/zhūdǎngān/ジューダンガン
豚の肝を塩漬け、乾燥などによって加工した保存食。
封肉
封肉/fēngròu/フォンロウ
豚肉を大きな塊のまま煮込む料理。
東坡肉
東坡肉/dōngpōròu/ドンポーロウ
皮付きの豚肉を醤油、酒、砂糖などで柔らかく煮込んだ料理。
作中では、台湾料理店で出される料理のうち、どれが客家料理なのかが話題になる。
嘉義の旅館|阿舍菜
阿舍菜/āshècài/アーショー・ツァイ
福佬系の富裕層や宴席に関係する、手間をかけたごちそうを指す言葉。
(114~116頁)
塩漬け保存食を表す言葉|豉
豉/chǐ/チー
作中では、福佬語では塩漬けの保存食を表す基本的な言葉が「豉」一つであるのに対し、客家語には少なくとも四、五種類あると説明される。
これは作中人物による、福佬語と客家語の食文化や語彙の違いについての説明として読む必要がある。
(116頁)
客家語の蛙料理と鳥の肉団子
仔
本書の表記:仔
現代の一般的な表記:青蛙/qīngwā/チンワー
客家語で蛙を表す言葉。作中では「クァイエー」と読まれている。
「」は蛙類を表す漢字で、「仔」を付けた「仔」が客家語の青蛙に当たる。
煎仔
本書の表記:煎仔
台湾華語での説明:煎青蛙肉/jiān qīngwāròu/ジエン・チンワーロウ
蛙の肉を細かく叩き、油で焼いた料理。作中では「ジェンクァイエー」と読まれている。
鵰丸
鵰丸/diāowán/ディアオワン
鳥の肉を使った団子。
「鵰」は台湾華語ではワシなどの大型の猛禽を表す字だが、作中では、鳥の種類を問わず、鳥で作った肉団子を同じ名称で呼ぶと説明される。
(116頁)
新港|新高飴と弓蕉糕
新高飴
新高飴/xīngāoyí/シンガオイー
日本統治期の台湾で作られた飴菓子の名称。
弓蕉糕
弓蕉糕/gōngjiāogāo/ゴンジャオガオ
バナナを使った糕・菓子。「弓蕉」は、台湾語に由来するバナナの呼称である。
(118頁)
第四章で見えてくる台湾の食
台湾で獲れた魚を刺身にする日本料理の影響、福佬料理と客家料理の違い、塩漬け保存食を表す語彙が同じ章に並ぶ。
第五章「肉臊」――肉のうま煮
高雄|滷肉飯
滷肉飯/lǔròufàn/ルーロウファン
醤油などで煮込んだ豚肉をご飯にのせた料理。
作中では、客家人の作る封肉に対する福佬側の料理として滷肉が説明される。また、滷肉よりも肉臊のほうが安いと語られる。
本書の脚注では、台湾で「滷肉飯(魯肉飯)」という名称が指す料理は地方によって異なると説明されている。同じ名称でも、細かく刻んだ豚肉をかけたものと、大きな豚肉の塊をのせたものがあり、肉燥飯との呼び分けも地域によって変わる。
(121~123頁)
高雄|菜脯と四破脯
菜脯
菜脯/càifǔ/ツァイフー
大根を干し、塩漬けにした保存食。
四破脯
四破脯/sìpòfǔ/スーポーフー
四破魚(マルアジ)を塩や乾燥によって保存した食品。
高雄の宴席|台湾料理
封肉
封肉/fēngròu/フォンロウ
豚肉を大きな塊のまま煮込んだ料理。
(122頁)
南靖雞
南靖雞/nánjìngjī/ナンジンジー
丸鶏を煮る、蒸す、焼くなどして仕上げる宴席料理。
冬瓜盅
冬瓜盅/dōngguāzhōng/ドングアジョン
冬瓜をくり抜いて器とし、具材とスープを入れて蒸した料理。
肉米蝦
肉米蝦/ròumǐxiā/ロウミーシア
海老を中心に、肉や野菜などを組み合わせた伝統的な宴席料理。
五柳鰱魚
五柳鰱魚/wǔliǔ liányú/ウーリョウ・リエンユィ
揚げたハクレンに、細切りの野菜を使った甘酢餡をかけた料理。
燉鰻魚湯
燉鰻魚湯/dùn mányú tāng/ドゥン・マンユィタン
ウナギを時間をかけて煮込んだスープ。
(124頁)
柳川橋の家|豬油飯
豬油飯/zhūyóufàn/ジューヨウファン
豚の脂を使ったご飯。
本書には、豬油飯とは別に、豚皮を使った肉臊についての記述もある。
柳川橋の家|豬皮肉臊
本書の表記:豬皮肉臊
現代の一般的な表記:豬皮肉燥/zhūpí ròusào/ジューピー・ロウサオ
豚皮を利用して作る肉臊。
(142頁)
第五章で見えてくる台湾の食
大きな肉の塊を使う封肉や滷肉と、細かな肉、脂、皮を利用できる肉臊では、価格と食べられる場が異なる。
第五章では、料理の味だけでなく、誰がどの部位の肉を食べられたのかという経済的な違いも描かれている。
第六章「冬瓜茶」――冬瓜の甘いお茶
台南|暑さをしのぐ飲み物
冬瓜茶
冬瓜茶/dōngguāchá/ドングアチャー
冬瓜と砂糖を煮詰めて作る甘い飲み物。
青草茶
青草茶/qīngcǎochá/チンツァオチャー
薬草や青草を煮出した飲み物。
梅仔湯
梅仔湯/méizǎitāng/メイザイタン
梅を使った、甘酸っぱい暑気払いの飲み物。
現代の酸梅湯に近い部分もあるが、同じ飲み物とは断定しない。
蓮藕茶
蓮藕茶/liánǒuchá/リエンオウチャー
レンコンを煮出す、または蓮藕粉を使って作る飲み物。
作中では、冬瓜茶、青草茶、梅仔湯、蓮藕茶が、暑さをしのぎ、渇きを癒やす伝統的な飲み物として並べられる。
(151頁)
台南|滷肉米糕
滷肉米糕/lǔròu mǐgāo/ルーロウ・ミーガオ
もち米を蒸した米糕に、豚肉の煮込みをのせた料理。
台南|鱔魚米粉
鱔魚米粉/shànyú mǐfěn/シャンユィ・ミーフェン
タウナギを炒め、米粉と組み合わせた料理。
台南|魚丸湯
魚丸湯/yúwántāng/ユィワンタン
魚のすり身で作った団子を入れたスープ。
台南|蚵仔湯
蚵仔湯/kēzǎitāng/クーザイタン(台湾華語)
蚵仔湯/ô-á-thng/オアタン(台湾語)
台湾華語では「é zǐ tāng」と読める(台湾の国語辞典では、牡蠣を意味する「蚵」は、一般的な漢字音の kē ではなく、台湾・閩南地域由来の読みとして é を認めている)が、実際の料理名としては、台湾語の「ô-á-thng(オアタン)」も広く使われる。
牡蠣を入れたスープ。
(157頁)
台南|楊桃湯
楊桃湯/yángtáotāng/ヤンタオタン
スターフルーツを使った甘酸っぱい飲み物。
(158頁)
台南|肉粿
肉粿/ròuguǒ/ロウグオ
米をひいて作る米漿を蒸し固め、豚肉や肉燥などと組み合わせる料理。
地域や店によって、肉を内部に入れるもの、上から肉燥をかけるもの、切って焼くものなど、さまざまな形がある。
(159頁)
第六章で見えてくる台湾の食
冬瓜茶や楊桃湯は、単なる嗜好品ではなく、暑い台南の街を歩くための飲み物でもある。
第七章「咖哩」――カレー
章題|咖哩
咖哩/kālǐ/カーリー
英語の「curry」を音写した言葉。
台北へ向かう汽車の中|麥煎餅
麥煎餅/màijiānbǐng/マイジエンビン
小麦粉の生地を厚めに焼き、砂糖、落花生粉、胡麻などを挟んだ菓子。
作中では、同じ系統の菓子に次のような別名があると説明される。
麥仔煎
麥仔煎/màizǎijiān/マイザイジエン
板煎炱
板煎炱/bǎnjiāntái/バンジエンタイ
同じ系統の菓子に、地域や話者によって複数の名称があることが分かる。
(188~189頁)
建成町の円公園|蚵仔煎
蚵仔煎/kēzǎijiān/クーザイジエン(台湾華語)
蚵仔煎/ô-á-tsian/オアチェン(台湾語)
台湾華語で読む場合は「é zǐ jiān」だが、台湾では料理名として、台湾語の「ô-á-tsian(オアチェン)」が広く使われる。
牡蠣、でんぷん質の生地、青菜、卵を一緒に焼いた台湾小吃。
単純な牡蠣入りの卵焼きではなく、もちっとした生地を使う。
建成町の円公園|雞絲麵
雞絲麵/jīsīmiàn/ジースーミエン
油で揚げた細い麺を、スープで煮て食べる料理。
「雞絲」と書くが、鶏の細切り肉ではなく、細く揚げた麺そのものが料理の中心である。
建成町の円公園|肉粽
肉粽/ròuzòng/ロウゾン
もち米と豚肉、香菇などの具材を葉で包んだ粽。
(193頁)
台中|芋棗
芋棗/yùzǎo/ユィザオ
蒸したタロイモを潰し、棗のような楕円形に整えて揚げた点心。
台中|千重糕と九層粿
千重糕/qiānchónggāo/チエンチョンガオ
幾層にも重ねて蒸した米の菓子。
作中では、台湾本島では次のように呼ぶと説明される。
九層粿/jiǔcéngguǒ/ジウツォングオ
色の異なる米漿を一層ずつ蒸し重ね、縞模様を作る。
(198頁)
第七章で見えてくる台湾の食
麥煎餅には複数の名称があり、料理名が地域や言語によって変化することが示されている。
台北の建成町では、蚵仔煎、雞絲麵、肉粽という街の小吃が並ぶ。一方、台中の芋棗と九層粿は、宴席や菓子文化に近い食べ物である。
第八章「壽喜燒」――すき焼き
章題|壽喜燒
壽喜燒/shòuxǐshāo/ショウシーシャオ
日本語の「すき焼き」に漢字を当てた名称。
台中|雞卷
雞卷/jījuǎn/ジージュエン
豚肉や野菜などの餡を豆腐皮で巻き、油で揚げた料理。
「雞」と書くが、必ずしも鶏肉を使うとは限らない。
台中|鹹糜
鹹糜/xiánmí/シエンミー
米に肉、魚介、野菜などを加えて煮た、塩味の粥。
台中|花生糖
花生糖/huāshēngtáng/フアションタン
落花生を砂糖や麦芽糖などで固めた菓子。
台中|客家餅
客家餅/kèjiābǐng/クージアビン
客家の餅や菓子。
台中|米糕
米糕/mǐgāo/ミーガオ
もち米などを蒸して作る米食。
台中|菜頭粿
菜頭粿/càitóuguǒ/ツァイトウグオ
米漿に大根などを加えて蒸した大根餅。
(222頁)
台中|蛤仔煮麵
本書の表記:蛤仔煮麵
現代の一般的な表記:蛤蜊煮麵/gélí zhǔmiàn/グーリー・ジューミエン
蛤蜊やアサリ類を煮込んだ汁麺。
貝の旨味を含んだスープで麺を煮る料理。
(228頁)
第八章で見えてくる台湾の食
雞卷、鹹糜、米糕、菜頭粿は、米や豆腐皮をさまざまな形に加工した日常の食べ物である。
第九章「菜尾湯」――〆のスープ
基隆市街|麻粩
麻粩/málǎo/マーラオ
もち米などから作る生地を揚げて膨らませ、麦芽糖と胡麻をまとわせた菓子。
基隆市街|米粩
米粩/mǐlǎo/ミーラオ
麻粩と同じ系統の米菓子。表面に炒った米や米香を付ける。
基隆市街|綠豆沙餅
綠豆沙餅/lǜdòu shābǐng/リュイドウ・シャービン
緑豆餡を生地で包んで焼いた菓子。
基隆市街|寸棗
寸棗/cùnzǎo/ツンザオ
生地を短い棒状にして揚げ、砂糖や糖蜜をまとわせた菓子。
作中では「内地のかりんとうとほぼ同じもの」と説明される。
(236頁)
大里|菜尾湯
菜尾湯/càiwěitāng/ツァイウェイタン
宴席で残った肉、魚介、野菜などを一つの鍋に集めて煮込んだ料理。
作中では阿盆師に作ってもらう。
菜尾湯は単に食事の最後に出されるスープではない。宴席で別々の料理として出された食材を集め、それぞれの味が混ざった新しい料理として煮直す。
佛跳牆
佛跳牆/fótiàoqiáng/フォーティアオチアン
肉、魚介、乾物など、山海の珍味を集めて煮込む福建系の高級料理。
作中では、菜尾湯について、佛跳牆の台湾版のようなものと説明される。
ただし、佛跳牆が最初から高価な食材をそろえて作る料理であるのに対し、菜尾湯は宴席の残りを集めて作る。似ているのは、多くの食材を一つの鍋に集めて煮込む点である。
(254~256頁)
第九章で見えてくる台湾の食
菜尾湯には、宴席で出されたすべての料理の一部が入る。
何を食べたかだけでなく、誰が宴席に参加し、誰が調理や片付けを手伝い、残った料理を誰と分け合ったかという共同体の記憶が、一つの鍋に集められる。
第十章「兜麵」――五目寄せ餅
台中市街|大腸
本書の表記:大腸
現代の一般的な表記:糯米腸/nuòmǐcháng/ヌオミーチャン
豚の腸に味付けしたもち米を詰め、蒸す、または茹でて作る。
(273頁)
柳川橋の家|九層粄
九層粄/jiǔcéngbǎn/ジウツォンバン
色の異なる米漿を一層ずつ蒸し重ねて作る客家の米食。
第七章の九層粿とよく似ているが、客家では米を使った餅や糕を「粄」と呼ぶ。
(277頁)
大里の宴席|排骨酥
排骨酥/páigǔsū/パイグースー
骨付きの豚肉を一口大に切り、下味と衣を付けて揚げた料理。
大里の宴席|八寶丸
八寶丸/bābǎowán/バーバオワン
肉餡に野菜など複数の具材を加え、卵黄などを中に入れて揚げたミートボール。
大里の宴席|蝦棗
蝦棗/xiāzǎo/シアザオ
海老のすり身などを棗のような形に整え、油で揚げた料理。
大里の宴席|豬肝捲
豬肝捲/zhūgānjuǎn/ジューガンジュエン
豚レバーと葛芋を豆腐皮で巻いて揚げた料理。
大里の宴席|雞皮捲
雞皮捲/jīpíjuǎn/ジーピージュエン
鶏皮で餡を巻き、油で揚げた料理。
大里の宴席|蝦餃
蝦餃/xiājiǎo/シアジャオ
海老を使った蒸し餃子。
大里の宴席|鹹蛋四寶湯
鹹蛋四寶湯/xiándàn sìbǎo tāng/シエンダン・スーバオタン
塩漬け卵と四種類の具材を使った煮込みスープ。
作中では、豚の胃袋、軟骨、するめ、貝などを使うものとして説明される。
大里の宴席|香酥鴨
香酥鴨/xiāngsūyā/シアンスーヤー
鴨を丸ごと蒸す、または下煮した後、表面を香ばしく揚げた料理。
鶏ではなく鴨料理である。
大里の宴席|什錦鹹米糕捲
什錦鹹米糕捲/shíjǐn xián mǐgāo juǎn/シージン・シエンミーガオジュエン
具入りのおこわを豆腐皮で巻き、油で揚げた料理。
大里の宴席|筍干大封
筍干大封/sǔngān dàfēng/スンガン・ダーフォン
細切りの干し筍を敷き、その上で大きな豚肉の塊を煮込んだ料理。
(282~284頁)
新年料理|兜麵
兜麵/dōumiàn/ドウミエン
さまざまな年菜の材料や残りを鍋に集め、サツマイモでんぷんなどで粘りを付け、一つにまとめる新年料理。
一般的な麺料理ではなく、複数の食材をでんぷん質の生地で一つにまとめた料理である。
鍋の中の食材が一つにまとまる姿に、家族や親戚が離れず、一つにまとまるようにという願いが重ねられている。
兜麵は、作中で実際に作って食べた料理ではない。千鶴が作ろうと考えた新年料理として語られる。
(287頁)
第十章で見えてくる台湾の食
大里の宴席には、骨付き肉、肉団子、海老、豚レバー、鶏皮、鴨、おこわ、豚の角煮など、異なる材料と調理法を持つ料理が並ぶ。
第九章の菜尾湯が、食べ終えた宴席の料理を一つに集めるものであるのに対し、兜麵は、新しい年に家族が一つにまとまることを願って作られる。
第十一章「鹹蛋糕」――しょっぱいケーキ
柳川橋の家|鹹蛋糕
鹹蛋糕/xián dàngāo/シエン・ダンガオ
甘いスポンジ生地に、塩味の具材を組み合わせた台湾式のケーキ。
「鹹蛋糕」は「鹹蛋」、つまり塩漬け卵を使ったケーキという意味ではない。「鹹」は、ケーキ全体が塩味であることを示す。
現在の鹹蛋糕には、肉燥、油蔥酥、筍、香菇、肉鬆などを使うものがある。
(297頁)
基隆|吉古拉
吉古拉/jígǔlā/ジーグーラー
日本語の「竹輪」の発音を音訳した台湾の名称。
魚のすり身を棒や竹に巻き付け、加熱して作る筒状の魚肉加工品である。
(303頁)
第十一章で見えてくる台湾の食
鹹蛋糕は、外国から入ったケーキを台湾の塩味の具材と組み合わせた食品である。
吉古拉は、日本から伝わった竹輪が台湾の魚漿製品として作られ、日本語の音を残した名称で呼ばれている。
どちらも、外から入った食文化が台湾の材料、製法、味覚、言語によって作り替えられた例である。
第十二章「蜜豆冰」――氷蜜豆
綠川町|蜜豆冰
蜜豆冰/mìdòubīng/ミードウビン
本書の日本語表記は「氷蜜豆」。
甘く煮た豆やさまざまな具材に、砕いた氷と糖水を合わせた台湾の氷菓である。
日本のみつ豆を思わせる名称だが、台湾では多様な具材を盛ったかき氷として発展している。
作中の一杯に具体的にどの豆や具材が入っていたかは、一般的な蜜豆冰の説明と区別する必要がある。
(341頁)
第十二章で見えてくる台湾の食
甘く煮た豆、さまざまな具材、氷、糖水が一つの器に重ねられた、街の素朴な甘味である。
第一章の瓜子では、台湾の食べ方を知らない内地人が、殻を割って中の仁を食べることを教わる。
第十二章の蜜豆冰では、台湾各地の食べ物をともに食べてきた二人が、台中の甘味を同じ場所で味わう。
物語は、食べ方を知らない異郷の食べ物から始まり、二人の記憶が重なった土地の味で終わる。
『台湾漫遊鉄道のふたり』を食事と地名から読む
全十二章の料理を並べてみると、この物語が単なる台湾美食案内ではないことが分かる。
登場する食べ物には、少なくとも次のような異なる層がある。
- 市場や街角で食べる小吃や甘味
- 駅や汽車の中で出会う旅の食べ物
- 柳川橋の家で食べる家庭料理
- 内地人をもてなす台湾料理店の宴席
- 福佬料理と客家料理
- 塩漬けや乾燥によって作る保存食
- 日本や西洋から入り、台湾で変化した食品
料理名には、台湾華語だけでなく、台湾語、客家語、日本語由来の言葉が残っている。
同じ料理でも土地によって名称が変わり、同じ名称でも地域によって違う料理を指す。滷肉飯と肉燥飯の違い、九層粿と九層粄の違い、麥煎餅に複数の名称があることは、その代表的な例である。
また、食事は登場人物同士の関係を示すものでもある。
食べ方を教える。相手のために料理を選ぶ。客をもてなす。家族のために料理を作ろうとする。宴席の残りを一つの鍋に集める。
誰と、どこで、何を食べるのかを追うことで、台湾の土地、言語、歴史だけでなく、二人の関係の変化も見えてくる。
『台湾漫遊鉄道のふたり』の旅は、鉄道で台湾を移動する旅であると同時に、食べ物を通して台湾を知り、食卓を通して相手を知っていく旅でもある。