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カメラと写真 レビュー 量ってみた

Nikon Z8レビュー【D850比較・導入編】


Nikon Z8を導入した。
メイン機としてD850を使いつつ、ミラーレスAPS-C機のZ30を乗り継いでの本格移行。
最初に書いておこう。Z8への導入は正解だった。導入前は現場によってD850とZ8を使いわけようと思っていたが、現状仕事においてあっけなくD850の出番はなくなってしまった。最早D850を持っていくことに若干の不安を感じてしまカラダになりつつある。
ミラーレスに加えてシャッターレス、EVFの性能などの(感情的に)不安な部分は、Z8の性能の前に消し飛んでしまったのだ。
ということで、今回はD850との比較という観点からレビューをしていこう。

外観・ファーストインプレッション

ぱっと見で操作系はあまり変わらなそうなD850とZ8だが、実は結構違う。

Z8ではZ9にも搭載されているレリーズモード切替ダイヤルが排されており、これは四葉ボタンに統合されている。
切り替えボタンを押しながら右手の2つのダイヤルで切り替えることになるのだが、各連写スピードやセルフタイマーの切替と同時に連写スピードの細かい設定やセルフタイマーの長さも素早く切替えられるためむしろ便利になっていると感じた。

また、背面もボタンが右手側に集中したため片手でも操作がしやすくなった。D850では拡大収縮などの操作は背面液晶使用時しか使わなかったため、左手側にボタンがあるのは違和感が無かったが、ミラーレスの特性上、ファインダーを覗きながら表示を拡大したりする上で、このボタン配置は嬉しい。レンズにそえている左手のポジションを動かさずに素早い操作が可能だ。左手側にボタンが無いことで、4軸チルト液晶の操作もしやすい。
フォーカスポイントロックレバーもなくなった。これに関しては、私はもともと使ってなかった上に、たまに気づかぬうちにロックされていて困ることがあったから個人的に好印象。

D850ではシャッター付近のボタンで一番突起していたのはISOボタンだったが、Z8では録画ボタンが一番突起している。まだたまに押し間違える。これは慣れれば問題ないのと、より動画機としての操作感を優先しているのだと思う。

肩液晶の表示はZ8の方が小さくなったが、表示される情報はほぼ変わらない。測光方式と画質情報が表示されなくなったようだが、測光方式は残しておいてくれてもよかった気がする。

サブセレクターの位置はZ8の方がD850よりも右にズレている。直感的にはAF-ONボタンと同じ距離にあったほうが使いやすいような気もするが慣れの問題だろう。

Fn1(D850のPv)、Fn2ボタン形状が違っているのが面白い。形状を変えなくても間違うようなものではないのだが何か意図があるんだろうか?

Z8ではシンクロターミナルが排されて10ピンターミナルのみになったが、私は現状外付けスピードライトではシンクロターミナルは使っていないし、リモートコードMC-36Aは使えるので問題はない。スピードライトの管理は無線の時代なので使うこともほぼないのだろう。

唯一にして最大の不満(不安?)はグリップ形状。Z8はD850に比べて中指のかかりが浅い。このせいでカメラを構えたときに中指で重量を支えにくくなっており、約100gの軽量化の恩恵は個人的に感じにくい。その代わり、中指で操作するFn1ボタン(D850ではPvボタン)へのアクセスは自分の手の大きさだと改善された(D850ではPvボタンを押すために中指を一度浮かせる必要があった)。最も使うボタンの一つなので、このトレードオフは悩ましい。
しかし、個人的なマイナスポイントにもなりうる点は結果的にココだけだ。

縦横チルトの背面モニタ


初めてD850を使ったときは堅牢性に不安を感じたチルト式背面モニタもすっかり慣れてしまった。慣れてくると欲が出てくるのが不思議なもので、ローアングルからの縦構図が撮れたらいいなと思っていたのだが、Z8ではきちんと対応してきている。
背面モニタの方式としてはZ30のようなバリアングルもあるがスチールメインであれば光軸がずれない縦横チルトの方が素早く操作できて良いと思う。
カメラから顔を離して背面モニタをチルトさせれば、即座にディスプレイモードで撮影に移れる。
D850ではやや難のあったライブビューモードだが、ミラーレスのZ8では当然ファインダーと同等の性能で撮影が可能だ。起動も早くAF性能にも問題がない。

EVFとフォーカス性能

Z8のEVFは概ね好評らしいが、D850のOVFと見え方の比較をするのもあまり生産性がない。実際にD850ユーザがヨドバシカメラなどで覗いてみて感動することはまずないと思う。私も「まぁこんなもんか」くらいにしか思わなかった。しかし、必要以上に明るい家電量販店ではEVFのすごさは感じられない。
EVFの本質は、撮影結果をそのままリアルタイムに確認できることだ。これはむしろ暗所にて真価を発揮する。そう、ファインダー越しに増感された映像を確認できるのだ。何を今さらと言われそうだが、一眼レフからお引越ししてきた身としてはこの衝撃はなかなかすごいものがある。
ほぼ真っ暗の寝室でファインダー越しにこどもの寝顔にピントが合っていることを確認しながら撮影する、なんてことが普通にできてしまう。D850でも背面液晶を使ったライブビューで同様のことはできたが、コントラスト検出AFの性能を考えると暗所での使用は正直難しかった。
フォーカスアシスト機能も優秀で、ファインダーの解像度はスペック上そこまで高くないものの、ピント面の繊細な調整はD850のクリアなファインダーでも難しかったため実質的な問題にはなっていない。それよりファインダーを覗きながら表示を拡大できる方が実用上は便利だ。
D850ではシングルポイントAF‐C+MFを多用していたのだが、シングルポイントAFにこだわっていたのは、結局自分がカメラを制御下に置かないとダメだという意識の現れだったのだろう。実際D850ではワイドエリアAFよりシングルポイントAF+MFの方が打率が高かった。しかしZ8を使ってみて、認識を改めないといけないなと実感している。つまり、進化したカメラというメカをどこまで信頼できるかという話だ。ワイドエリアAFを積極的に使って打率が上がるなら、当然使うべきで、どのような環境までならカメラの機能に身を任せ、どこから自分がマニュアルで介入すべきなのかの線引きをコミュニケートして見極めるしかない。

フォーカスモードの切替ボタンはD850と同じ位置にある。
また、D850のファインダーに比べて、Z8のファインダーは広い上に(設定にもよるが)上下に情報が表示される。デフォルト設定では目玉をぐりぐり回さないとすべてを確認できない。
ファインダー内は広いことが正義だと思っていたが、ポートレートや動物の撮影などであれば、素直にファインダー表示サイズを小さめにしたほうが良いかもしれない。

バッテリー性能

ミラーレス、それもZ9の性能をほぼ受け継ぎながらの小型化ということで不安しかないバッテリーの持ち具合だが、思ったほど悪くない。
始めこそ設定を適宜いじりながら撮影していたために500枚弱でバッテリー残量12%になってしまったが、設定がこなれてくると700枚程度撮っても残量25%という感じ。私は連写機能はあまり使わないので、ほぼシングルショットでの結果だ。
自分の撮影スタイルだと、予備バッテリーを一つ持っていればとりあえず安心かな、という感じ。とはいえ、ファインダーを長時間覗いていれば、撮影はしなくともバッテリーは消費するので、撮影スタイルによってはかなり持ち具合に変動が出てきそうではある。

Z8には充電・給電用とデータ通信用の2つのUSB type-C端子が搭載されているため、出先での緊急的な充電も可能だが、まだ使用していない。動画の撮影やタイムラプス撮影を多用するような場合はとても重宝しそう。

高効率RAW

地味にありがたいのが、高効率RAW。RAW撮影において、データの使用量が気にならないといえばウソになる。
D850でjpg(Fine)+RAWで撮影すると一枚あたり20MB(jpg)+50MB(RAW)くらいになっていたのだが、Z8の高効率RAWを使うと、RAW(高効率☆)でもおおむね20~25MBくらいになる。
Z8の導入にあたって、CFexpress TypeBとUHS-IIのSDカードを購入したのだが、秒コマ20枚の高速連写でも10枚くらいの連写であれば、普通にCFexpress TypeBとUHS-IのRAW+jpgの同時記録モードで撮影できてしまうことに気づいてしまった。今のところ書き込み待機も発生していない。
なので、スチールメインで、そこまで長時間の連写を多用しないのであれば、副スロットにとりあえず入れておくSDカードはUHS-Iでも大丈夫かもしれない。このあたりはもう少し使用してから考えていこうと思う。
どちらかというと、連写を多用しているとカメラの左下あたりがだんだん温まってくる方が気になる。まぁコレに関しては秒コマ20枚の撮影、つまりほとんど動画撮影をしているようなものなので仕方がないのかもしれない。

シャッターレスであるということ


この写真はシャッター膜ではなくセンサー保護膜だ。デフォルト設定ではなぜかOFFになっているので、電源OFF時はセンサー保護をONにしておいた方がいいだろう。
私はミラーレス移行をためらっているうちにシャッターまでなくなってしまったわけだが、使ってみるとまぁ便利だ。私は高速で動く被写体を撮影することはほぼないため、ローリングシャッター歪みについては心配をしていないのだが、1/8000s以下の世界、1/32000sまで撮影可能というのは単純にありがたい。D850を使用していて、f/1.4の明るいレンズを解放で撮影していると、ISO64の1/8000sでもギリギリということはよくある。だからと言ってわざわざNDフィルターを使うのも面倒なわけで、時折設定を誤って露出オーバーになってしまう事故というのはあったのだが、1/32000sというシャッタースピードはその人間のミスを2段分まで吸収してくれる。ZマウントのS-Line、f/1.2の高性能レンズを今後使っていくのであればこの1/32000sというシャッタースピードは現実的な恩恵があるだろう。
デフォルトのシャッター音も個人的にはあまり気にならない。なんとなく右上から音がなるのでレンジファインダー機を使ってるような感覚になるから少し不思議だ。少し面白いと思ったのが、Z8を導入して数日は、身体がミラーとシャッターショックを吸収しようとするような力みを感じたことだ。
シャッターを切る(切ってないのだが)瞬間、私は一瞬だけグリップをグッと握る習慣があったらしく、しかしカメラは全く振動しないために謎の徒労感があるのだ。まぁコレも慣れだろう。D850もまだまだ使っていくつもりなので、このカメラ内部のメカ駆動の振動はいつか贅沢なものになっていくのかもしれない。

自由なカスタムボタン設定

Z8ではD850よりもより自由なカスタムボタンの設定が可能。
例えばAF-ONボタンではあらかじめ設定したとおりのフォーカスモードでフォーカス、サブセレクターの押し込みでは被写体検出モードでフォーカスなんてことも可能だ。
ちなみに私の設定はこんな感じ。

Fn1:AE-L
Fn2:DX/FX切り替え
Fn3:測光モード切替
サブセレクター押し込み:被写体検出AF-ON
録画ボタン:ピクチャーコントロール

カメラ本体の評価測光が基本的に優秀で、後からの画像の編集可能な幅が昔よりも大幅に自由になったとはいえ、やはり撮影時点のjpgデータで適切な露出にはしておきたい。なので、私は結構測光モードの切り替えを多用する。たいていはマルチパターン測光で事足りるもの、厳しい条件下ではスポット測光やハイライト重点測光を使った方が露出補正で対応するよりはるかに早い。
四葉ボタンから消えてしまった測光モードの代わりに、Fn3で測光モードを切り替え、Fn1のAE-Lで対応している。
また、D850よりはるかに優秀になったオートフォーカス機能を活用するため、フォーカスモードがどうなっていてもマルチセレクターの押し込みで即座に被写体検出AFを使えるようにしてる。不意に訪れるシャッターチャンスにピンポイントフォーカスに設定していたため間に合わず、なんてことがほぼなくなった。

ボディ内手振れ補正

5軸補正のボディ内手振れ補正とレンズシフトVRの組み合わせで6段である。まぁコレは理想値だろう。
とはいえ、VR非対応レンズではちょっと無理だと感じる局面でもブレない。NIKKOR Z 40mm f/2を装着して歩きながらSP1/20sで片手撮影なんてことをしてもかなりの確率でバチっと撮れる。むしろ調子にのって被写体ブレを量産しがちだ。

付属品について


今回はNikonダイレクトで購入したため、キャンペーンでPeak Design(ピークデザイン) のテクポーチBTP-BK-2とスライドライトが付属してきた。他にもステッカーとかもあったけど、まぁいいでしょ。
D850では一番幅広のPeak Designスライドをしようしていたのだが、案外スライドライトでも十分そう。

テクポーチはなんとなく便利そうなのだけど、今のところ持ち出しはしていなくて、机の上に散乱していたカメラ用品を入れている。今後小物入れがないようなカメラバッグを導入することがあれば持ち出すかもしれない。

重さを測ってみよう


Z8から取り外せるものはアイピース以外外して909g。1kgを切ったのはいいことだ。

同じ環境でD850はギリギリ1kg切れない。アイピース外したらもしかして。

さいごに‐人と人をつなぐツールとしてのカメラ‐

Z8の購入前に思っていたのは、このカメラを機材として愛せるのかということだった。
私の専門はポートレートだ。カメラは私と被写体をつなぐためのツールでもある。
カメラは機材だ。仕事道具としての割り切りは必要だが、スペック表では語れないものというがあるのは事実で、そういった何かが被写体の写りに影響を及ぼすのではないかという不安はあった。

思い返せば18年前に中古で買ったフィルムカメラ、Nikon FMが私とカメラの出会いだった。露出計以外に電力は不要な機械式カメラで、電池がなくても写真が撮れる。そんなカメラだ。フラッグシップの名機と言われたF3を乗り継いで、初めてのデジタル一眼レフはAPS-C機のD7000。SDスロットも2つあり、実務にも十分耐えるカメラだった。10年以上前のカメラだが今でも動く。D300s、D3sなど、いくつかのカメラを乗り換えながら、行き着いたのがD850。今回のZ8の導入で、D850が私にとっての最後の一眼レフ機になる可能性が高い。
ミラーなくなった。シャッターがなくなった。OVFではなくなってしまった。
確かに全くさみしくないと言ったら嘘になるのだが、Z8を使って人を撮影して気が付いたことがある。

Z8のデフォルトのシャッター音は小さい。屋外撮影をしていると、被写体には聞こえない程度の音量だ。
ある日たまたま集合写真を撮ることになり、ファインダーを覗きながら数枚撮影をしていると、ポーズをとっていた人たちがだんだんと不安そうな表情になる。そうか、撮影されたかどうかわからないのだな。ものは試しだ。私は気づかないふりをしてファインダーから目を離して黙っていた。
「いつ撮るんだよ!」と言われたので「もうたくさん撮ってますよ」と答える。
「ウソでしょ?!」と言って笑い合っている人たちをワイドエリアAFで連写する。いい写真が撮れた。
フィルム時代、集合写真の撮影で皆の表情がかたいとき、フィルムを巻き上げ忘れてシャッターが切れないフリをして、笑われている表情を撮っていたことがある。デジタルに移行してからというもの使えなくなっていたテクニックだったのだが、シャッター音を消すことも出来る、というのは被写体との新たなコミュニケーション方法として使い道があるかもしれない。
私の中で不安がもやもやとしていた不安が解消された気がした。


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