まさかゲームのお話を書く日が来るとは思わなかったのだけど、珍しく旬なゲームをやってたので感想的なことを書いておこうと思うよ。
ゲームという媒体自体にはあまり詳しくないので、ストーリーを中心としたレビューです。
記事後半はゴリゴリのネタバレありの感想なので気を付けてください。
目次
前作について
実は、前作の『Horizon Zero Dawn』が、私の初めてプレイしたオープンワールドゲーム。
「え、今のゲームってこんなに綺麗なんですか?」って衝撃を受けた。
あれから、『The Witcher 3: Wild Hunt』とか、『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』、『アンチャーテッド』シリーズ、『METAL GEAR SOLID V: THE PHANTOM PAIN』なんかをやることになった。
そういう意味でも、このゲームタイトルは、私をオープンワールドの世界にひきずりこんだ、個人的に結構思い入れのある作品だったりする。
このゲーム、ジャンルとしては私の大好きなSFになる。あまりハードなSFではないけど、ディストピアものやサイバーパンクな世界観が好きで、細かい考証を気にしない人であれば大当たりすると思う。読み物もたくさんあるのが個人的に嬉しい。
前作のあらすじ
今作のストーリー(ネタバレなし)
前作でハデスを倒し、一度世界を救った主人公のアーロイは、皆と祝杯を挙げることなく、荒廃し続ける大地を救うため、テラフォーミングのシステムを司るガイアのバックアップ探す旅に出る。
半年間探しても見つからず、同じノラ族のヴァールに連れられ、ハデスとの戦いの地、サン王国に戻り、そこでハデスを倒すために使用した槍に、サイレンスがハデスのデータを転送する装置を仕掛けていていたことが判明する。
当のサイレンスは、ガイアの居場所が知りたければ、グズグズしてないで禁じられた西部に来いと告げ、物語は禁じられた西部へ。
完成度の高い対比の物語
前作は、プレイヤーである自分自身が、アーロイという主人公を操作し、異端児という逆境から這い上がることと、育ての父親を殺した敵を追うことが、自身の出生の謎を解くことにつながり、1000年前の世界とその物語に自然とリンクしていた。
1000年という時を経た過去と現在、科学技術と原始宗教、機械と自然。物語は常に対比を持って語られ、主人公がその対比の象徴となっていることが最大の魅力だったと思う。
今作でも、対比が重要な要素だ。
アーロイとエリザベト・ソベック、両者は同じ遺伝子を持ち、いわば99%以上の同一人物。
“nature or nurture”(生まれか育ちか)、というセンシティブな問題に、本作は一つのまわりくどい回答を出しているようにも思える。
ひとりの人間性の根本は遺伝子に依存したとしても、人が人とが深く関わる限り、その集合体がはじき出す結果は変わりうる、ということだ。
アーロイとエリザベトは、二人とも天才だ。性質も非常に似ている。
1000年の時を経て、まったく違う「育ち」をしても、二人とも同じような悩みを抱え、孤独に苦しんでいることは前作でも語られていた。
今作では、この「生まれ」の呪縛に苦しむアーロイに、何度となく仲間が手を差し伸べる。
周囲と距離をとり、ひとりで世界を救おうとする頑ななアーロイを、本作の登場人物たちは誰も見捨てず、次第にアーロイも心を開いていく。エリザベト同様、心を許す唯一の相手だったAIのガイアにも諭されて、仲間と協調していく流れは興味深い。
一方で、2060年代、孤独に未来の世界に希望を残そうとするエリザベト・ソベックはどうだろうか。
今作では、エリザベト・ソベックの周囲の人物たちに関しても、だいぶストーリーが掘り下げられている。
『トラビスとエリザベト』というホログラムデータポイントには、こんなセリフが残されている。
トラビス・テイト:まったくわからねえなあ、リズ。
俺から見たらあんたみたいに、まるで絵に描いたような聖人君子で、この世界をこよなく愛する人のそばに…だーれもいねえとは。つーか、あんた友達いんのか?
結局、彼のセリフにも、エリザベトはまともに答えない。
彼はもともと、指名手配されて逃亡中のサイバー犯だ。素行も悪くプロジェクト内の問題児でもあるのだが、そんな彼からしても、エリザベトの孤独感は異様なのだ。彼は彼なりに彼女を尊敬している。しかし、彼を含めた周囲の気持ちに彼女が答えることはない。
泣くときは一人で泣き、最後は全てを守るためにひとりで死ぬ。唯一のまともな話し相手はAIのガイアだけだったと言ってもいい。
アーロイが、1000年前にエリザベトが越えられなかった「孤独」を乗り越えていく過程と、その対比こそ、本作の魅力と言ってよいだろう。
説明を続けるとネタバレになってしまうので、ネタバレOKな方は下の方を読んで欲しい。
全体的に、前作よりも一つ一つのサイドストーリーの掘り下げ方がけた違いになっていて、おつかい感が減ったのも良かった。
これはひとえに、心を閉ざしていたアーロイが周囲と関わるようになったからだと思う。
ストーリー上の残念なところ(ネタバレなし)
前作の作品としてのまとまりがかなり綺麗だったこともあるのだろう。
今作はよくも悪くも続編への「つなぎ」のストーリーだった。大きな起承転結の、承か転なのだけど、その中での起承転結がかなり弱かったのは否めない。とりあえず風呂敷を広げました、次回作、楽しみにしててね!という感じ。
今作では、アーロイ(サイレンスとかも持ってるけど)だけが持っていたフォーカスという1000年前の叡智の結晶を、仲間にも配ることになる。これは仲間を増やす以上仕方のないことだし、自然な流れでもあるのだけど、過去と現在の対比が非常に薄れた印象だ。
また、このフォーカスという劇物を手に入れた仲間たちも、自分たちの拠点内で過去について座学をしてばかりで、仲間たちがフォーカスを活用して冒険するような描写はほとんどない。ちょっともったいない気がする。
また、前作で個人的に大きな楽しみだった、世界を探索して1000年前の世界を知る楽しみがすでにある程度ネタバレしてしまっているという意味で、新鮮味が薄れてしまったのも、仕方ないとは言え事実。
過去についてのストーリーテリングも、大きな章が更新されるわけではなく、小さなサブストーリーが紡がれる程度。まぁ、仕方ないか。
完全続編のナンバリングタイトルと言うより、バカでかいDLCくらいの感覚でやった方が満足感があると思った。
ゲーム性自体は何も改悪されず、純粋にパワーアップして面白いので、上に書いた字面程の悪い印象はない。
面白い小説や映画だって、大作となれば常に物語が盛り上がり続けるわけではないのだ。
難易度
ベリーハードにすると、フロムソフトウェアのゲームになります(笑)
こちらは一撃で死ぬくせに、敵の弱点を突かない限りまともにダメージが入らないので、時間がかかってひたすら面倒な感じ。
だからと言ってイージー以下だと棒立ちしてても死なない簡単さでゲーム性が消えるので、ノーマルモードが妥当だと思う。
そういう意味で、適切な難易度設定なのかも。
翻訳の完成度
私は基本的に英語音声+日本語字幕でプレイしているのだけど、とにかく字幕を含めた翻訳が素晴らしい。語学の勉強になるレベル。
本当に、そこら辺でありがたがって読まれてるビジネス書なんかより、よっぽどしっかりした翻訳がされている。
読み物が多いゲームなので、翻訳はとても大切だ。
メインクエストの『過ぎ去りし時の種』で、一ヶ所翻訳のせいで謎解きがしにくい場所があったけど、そのうちアップデートで修正されたりするのかな。
ラスベガスのおはなし
前作の舞台はユタ州からコロラド州あたり、今作のタイトルが『禁じられた西部』とされている時点で、え、ベガスじゃん!と思っていはいたのだけど、このラスベガスの物語がメインストーリーの目的忘れるレベルの完成度でおったまげ。
夢を追う大馬鹿野郎のモーランド、守銭奴のアバダンド、テノールな語り部のステマーの三人組は今作で一番好きな人たちだった。
物語はアーロイがテラフォーミングシステムの副次機能の一つ、『ポセイドン』を探していると、砂漠のど真ん中で水があふれる建物を発見するところから始まるのだけど、長くなったので別記事に。
彼らのお話とラスベガスの解説はコチラ。
スクショ機能の大幅パワーアップ
なんと、絞り値機能と複数レンズが搭載された。
レンズは12、14、16、40、85、100、180mm搭載。
絞り値は1.2、1.4、1.9、2、2.4、2.8、4、5.6、8、11、16、22、64。
85mmがあるのが嬉しいなぁ。そして絞り値f/1.2。高級レンズじゃないですか。嬉しい。
ここで語りつくせないのでこれも別記事にします。
空を飛び、水中に潜り、美術鑑賞もできる
オープンワールドにおいてここまで自由に動けるって他にあるのかしら。
これはスクショ機能のパワーアップと相まって、すさまじい撮影ができる。
これ、ムービーではなく操作中のスクショである。すごいとしか言えない。
レンブラントですよ。なんなんだこのテクスチャ。すごすぎる。
バグ
残念ながら、まだバグは多い。ストーリー進行不能なレベルのバグに遭遇しているプレイヤーも多数いる模様。
私も一度、サイドクエスト『血には血を』で、戦闘後にカヴォーとアロケーに話しかけるというフラグが立ったのにアロケーがなぜか戦死していて進行不能になる、という悲しいバグには遭遇した。
あとは、回収契約の『古の遺物』というクエスト。クエスト受注前にクエスト用特殊アイテムを手に入れてしまっていることが原因で、目的ログが回収できないバグ。これはどうしようもなかったのでゲリラゲームズに報告。
いざメッセージ送ろうと思ったら、ゲーム内のアイテムやらクエストの英語表記が分からず英語表記で確認しにいくのが手間だった。
他にも倒した敵が空中で高速回転していたり、
死んだ敵が立ちっぱなしだったり、みたいなことは結構起こる。
テキストの誤字脱字、タイポ的なものも多少ある。
前作ではバグに一度も出会わなかったので驚いたのだけど、前作も最初はこんな感じだったのかしら。
どうでもいいけど、バグ画面なのに景色が綺麗。
ネタバレありのストーリー解説
ハデスを尋問して古の知識を得ようとしたサイレンスは、1000年前に失敗したはずのオデッセイ計画が実は成功しており、81兆キロメートル彼方のシリウス星系にて生き延びていたことが判明する。
オデッセイ計画は、当初主要国が参加したコロニー船計画だったが、国同士の争いにより頓挫、地球滅亡を前に当時の富裕層、ファー・ゼニスが計画を再始動させていた。
ファー・ゼニスは最先端の遺伝子技術で不老不死となり、シリウス星系で怠惰な生活を送っていた。しかし、一部のメンバーが肉体的な不老不死に不満を抱き、精神のデジタル化を画策。任意の対象に自らの精神をアップロードするも、膨大なデータべースとして放棄された、記憶や感情、偏見などがあるとき感情を持ち、ファー・ゼニスの所有していた情報を掌握、負の感情の結晶体とも言える「ネメシス」は瞬く間にファー・ゼニスを壊滅させる。
わずかな生き残りはネメシスから逃れ、新たな住処を見つけるため、ゼロ・ドーンの遺物、テラフォーミングシステムすべてを回収するため地球に向かっていた。前作でテラフォーミングシステムを暴走させた、謎の絶滅信号も、ネメシスから送信されたものだった。
サイレンスは、ファー・ゼニスがゼロ・ドーンのメンバーから供与された副次機能の一つ、アポロ(新人類を教育するための旧人類の叡智のデータベース。地球に残されるはずだったアポロの元データは、テッド・ファロによって1000年前に破壊されている)を奪って、ネメシスの脅威から逃れようと画策する。
ファー・ゼニスに対抗するため、禁じられた西部に住まうテナークス族の過激派、赤の動乱でカージャに恨みを持つレガーラというテログループに機械獣を操る技術を供与。機械獣の軍勢と、ファー・ゼニスを倒す秘密兵器を作成する。
結局、禁じられた西部にあまねくテナークス族をまとめあげたアーロイに、レガーラの機械獣の軍勢は叩き潰され、サイレンスの計画はお釈迦になる。
アーロイは、ファー・ゼニスがガイアを手に入れるために地球に向かう宇宙船の中で作った、プロジェクト:ゼロ・ドーンの創始者、エリザベト・ソベックのクローン(つまり、アーロイと同じ遺伝子を持つ人間)であるベータや、海の向こうからやってきたクエン国の預言者アルヴァ、テナークス族のコターロ、レガーラなんかもを仲間に加える。軍勢を失ったサイレンスも仕方なくともに戦うことになる。
…さらに1000年前にエリザベト・ソベックと親密な関係だったファー・ゼニスのティルダが寝返り、ファーゼニスの連中を撃滅することに成功するが、そこはやはり1000年生きながらえたティルダ。定命を生きる人類とは運命を共にする気はなく、愛するエリザベト・ソベックのクローン、アーロイと永遠の愛の逃避行に出立するつもりだったらしいが、アーロイにフラれ、こんがり蒸し焼きに。
眼前の問題が解決され、ファー・ゼニスの宇宙船に乗りこもうとするサイレンス。アーロイに一緒に来るかと誘うも、当然のごとくフラれた上に残されたみんながワイワイやっているのを見て寂しくなったのか、「もうちょっと地球にいるわ」と唐突なデレ属性を発動。
次なる戦いへと備えるため、仲間たちは各地へ旅立ったのだった。。。みたいな感じでエンディング。
未来と過去を引き連れたさらなる対比の物語(ネタバレあり)
先にも書いた、本作における主人公アーロイと、その遺伝子の元の持ち主である、1000年前を生きたエリザベト・ソベックの対比。
あれはいわば、過去の遺伝子、エリザベト・ソベックの遺伝子の失敗を現在のアーロイが乗り越える物語だった。
しかし、本作ではさらに1000年間途切れることなく技術を発展させたファー・ゼニスが作ったベータも登場する。
彼女はガイアを起動するためだけに道具として作られる。
1000年前の地球で未来(現在)に対する希望をつないだ天才科学者エリザベト・ソベック、現在の危機を救ったアーロイに対し、精神的には劣悪な環境で育てられたベータは非常に後ろ向きで気弱に描かれる。
三人とも文句なく天才なのだけど、ベータにはエリザベトやアーロイのような強さは見られない。
しかし、仲間とともに過去を乗り越えたアーロイと出会ったことで、ベータもまた変わっていく。
現在を生きるアーロイを中心に語るのであれば、アーロイは1000年前の過去と1000年後の未来の自分を引き連れて現在の問題を解決したのだ。
これは、本質的に遺伝子によって決定づけられた個人の特性(生まれ)を仲間とのつながり(育ち)で乗り越えるという、“nature or nurture”に対する、壮大で前向きなメッセージだろう。
残念なところ(ネタバレあり)
ストーリとしては何度となく想像の斜め上をいく驚きもあるし、純粋に楽しめるのだけど、物語を彩るエッセンスである敵に関する描写がとにかく薄味だった。
最初から手強そうなレガーラは終始咬ませ犬で終わるし、今回の真の敵であるファー・ゼニスの連中もかなりあっけなく壊滅する。
たぶん、全体のボリュームに対して、敵が二段階というのはちょっと盛り過ぎだったのだと思う。それぞれが尺的に足りなかった感じが否めない。
まがいなりにも1000年の時を生きたファー・ゼニスの連中は、富と得た人間はろくでもねぇという大衆のステレオタイプなイメージを濃縮還元したような連中であり、一部を除けば基本的にただただロクデモナイ人間とだけ描かれ、そのままのイメージで壊滅する。
1000年の歴史を、彼らはただただろくでもなかったの一言で終わらせている感じがなんとももったいない感じがした。これは翻って、現在を生きる人類の精神や文化が、すでに行き詰っているという宣言にもなってしまう。
細かいお話と解説(ネタバレあり)
冒頭からのレガーラの咬ませ犬感
レガーラというのは、もともとはテナークス族だったものの、赤の動乱でのカージャに対する恨みを忘れられず、カージャと和平を結ぶ者は全員裏切者とする過激派テロ組織だ。
リーダーは赤の動乱で弟を生きたまま火あぶりにされているのでまぁアレなんだけど、サイレンスに利用されている時点で、咬ませ犬になるであろうことがこの時点で明瞭なのがなんだか悲しい。
しょっぱなから捨て台詞を吐くレガーラ「今日のところは見逃してやる」。
強力な軍隊にもなり得たのだろうけど、なんというか、組織だった動きがまったく見られず、レガーラさん以外全員モブ。
これは前作もそうなのだけど、敵対する人間の組織の層が非常に薄く、たった一人のアーロイに各個撃破されてしまう。今作は仲間も増えたので、敵も多少の組織体系があっても良かったのではないかと思う。
過去のテラフォーミング失敗について
西部を進み、サイレンスに教えてもらった場所まで行くと、ボロボロのハデスさんが放置されている。ずいぶん長い距離を引きずられてきた模様。ちょっとかわいそう。
アーロイの皮肉を検知する程度の力は残っているものの、地球が今まで2154年、2161年、2168年の3度テラフォーミング失敗してハデスにリセットされ、今の生物圏がバージョン5であること以外、大した情報も聞き出せないので、容赦なくとどめを刺される。
もともとはテラフォーミングの失敗に備え、必要なシステムとして開発されたハデスさんなんだけど、宇宙の彼方から飛んできた信号で感情を持ち、最後は殺されてしまうんだよね。
人に作られ、人に感情を与えられ、最後は破壊されるという、なんというか結構かわいそうなイメージがある。
アベンジャーズ登場
サイレンスによりあっさり誘導されたアベンジャーズ、じゃなかった、ファー・ゼニスの連中(ハゲとトリニティーとジャイアン)とエリザベト・ソベックのクローンであるベータ。
登場シーンがもう誰が見てもアベンジャーズ。
サイレンスとしてはベータがいるのが想定外で、アーロイは拘束される程度で済むはずだったらしいのだけど、ベータがいるのでもう不要だったというオチ。
拠点という新要素
今作では拠点という新要素がある。
かつての地域管理センター。ゼロ・ドーンの後継者たちがテラフォーミングの活動を監視するための場所だ。
なんか、もっと秘密基地っぽく発展していくのかと思いきや、ものすごい生活感あふれる感じになってある意味衝撃的だった。
拠点には秘密部屋があって、さらにパスワードを解読すれば過去にこの場所を作った人たちのメッセージを読むことができる。
副次機能という名のドラゴンボール集めの旅
9つある副次機能のうち、アポロ、アルテミス、エレシウスは消失(正しくはファー・ゼニスの連中がすでに持っている)、世界中のネットワーク上を移動し続けているヘファイストスに対抗するため、アルテル、デメテル、ポセイドンを探す旅に出ることになる。副次機能をガイアに統合して、ヘファイストスによって新たな機械を作れば、地球を修復できるってこと。
ここ最近の環境崩壊は、継続されるテラフォーミングを統括するガイアが自爆して不在だったから動作不良を起こしていたらしい。
海の向こうのクエン国
デメテルを回収する過程では、海の向こうから来たクエン国の預言者、アルヴァが仲間になる。
この海の向こうというのはちょっと謎で、ユーラシアの東側か、アジアあたりのことだろうか。
預言者の皆さんが持っているフォーカスが2050年代半ば以降のファイルが読み込めない旧式で、テッド・ファロを世界の救世主だと信じているあたり、AIの暴走以前、当時の環境破壊をファロ・オートソリューションズが救った後に何らかの原因で滅びた土地からでも来たのだろうか。環境破壊が解決しても、大規模なテロなんかは起こっていたようだし。
そうでもないと旧式のフォーカスばかり見つかるというのはちょっと考えにくい。
なお、クエン国の遠征団のリーダー、シーオさんは自分を英雄テッド・ファロの生まれ変わり、などと意味不明な供述をしており。
テッド・ファロはテーベ内でハーレム&趣味の悪い生活をしながら不老不死の研究をしていたことが分かる。挙句、自分以外は皆死に、実験失敗で人間の形をとどめない何か(映像は出ないが、おそらくバイオハザードな感じになってる)になっており、シーオさんにこれはみんなに見せちゃいけないヤツだと判断されあっけなく焼却処分される。シーオさん自身は証拠隠滅ついでにアーロイとアルヴァの抹殺を命じるが、さんざん死亡フラグをまき散らした挙句、ファロの巨大な像の頭の下敷きになり、意気地なしみたいに死ぬ。
本作の最大の力技
アイテルはテナークスの長、ヘカーロの王座の下に埋まっている。
アイテルに合わせてくれる代わりと、ヘカーロからの面倒なお使いが発生。壁の中に隠れて出てこない空の一派を引きずり出してこいと言われるも、「難攻不落の巨壁がある限り」引きこもります宣言をしてしまった、空の一派の族長。当然の成り行きとしてアーロイに壁ごと爆破され引きずり出される。基本的に面倒ごとは腕力で解決するタイプ。街ごと吹き飛ばなくてよかった。
工夫ができないレガーラ
全部族の代表者の集まる儀式に空の一派も合流し、想定通りレガーラの襲撃を受ける。
奇襲っぽく乗り込んでくるのだけど、完全にバレてるし普通に撃退される。
こちらはアベンジャーズと戦った後なので、特に手応えもなく、「覚悟しておけ」と言われても、なんというかそれどころじゃない。
JTFとテナークス族
アイテルを回収し、電源を復活させると、長いこと正常に動作していなかったホログラム映像が投影される。
ここで投影された映像、1000年前のJTF(ジョイント・タスク・フォースのことだよね)が当時の機械の脅威を前に、人類が争いをやめ、団結の必要を説く演説だ。
1000年前の機械や環境との戦いと、現在の脅威が偶然の一致を見せていて、これが殺し合いの歴史の上に立つテナークスをまとめた族長のヘカーロを平和の道へと導いたという素敵な展開。
彼女は何歳なのか
なんとなく気になるのは、ベータは地球に向かう途中で作られたわけだけど、赤ん坊から普通に育てられたということだろうか。
シリウス星系からの8.61光年の距離を、仮にこれがガイアの想定通り絶滅信号の送信とほぼ同時の出発で29年かけたものだったとすると、赤ん坊からの育成も可能なわけだよね。たまたまアーロイと同い年くらいで地球に到着したのか、他のファー・ゼニスの人間同様不老となっているかは、本編の中では語られない。
まぁ、アーロイのモデリングを使いまわせなくなるという大人の事情と、まったく同じ人物が向き合うという構図は手放しがたいってところだよね。
偏った美術の授業
アーロイは作中、寝起きに小難しい解説付きの絵画の授業を受けることになる。
フェルメールやらレンブラントやらウィレム・ファン・デ・ヴェルデやら、特に解説がないけど17世紀のオランダの画家ばかりだ。このゲームの開発元のゲリラゲームズが、オランダの会社だからだろう。
ゲームという媒体の中で、ここまで精巧な絵画を見て歩けるというのはすさまじい体験で、このゲームの解像度を最大限に活かしている場面の一つだと思う。
そんなわけで、ティルダはオランダ人はオランダ人という設定。このあたり踏まえてあげないと、地球の貴重な芸術を残すと言いながら自分の祖国の芸術だけを展示する偏った人物になってしまう。
最後まで存在感のないレガーラ
次は総力戦と意気込んでいたレガーラの機械群は空からの一発の電磁パルス攻撃で壊滅。もう、新たな飛行操作のレクチャーでしかない。
レガーラもあっさり降参しアーロイと戦うことに。
サイレンスは真面目な計画はお釈迦となって、仕方なく拠点に合流。ティルダもそろい、ファー・ゼニスの拠点に忍び込む。
お邪魔虫どもは駆逐してやると、空から登場したファー・ゼニスの連中はサイレンスの秘密兵器であっさりバリアを無効化され、サンダージョー(恐竜みたいな機械)の群れに襲われ、アベンジャーズが恐竜に食い荒らされるジュラシックパークのような様相に。
後味の悪いサイドクエスト『征服者の門』
水不足にあえぐ土地にて、問題解決に協力したものの、最後は司令の座を争うヤーラとドラッカの二人のもめごとに付き合わされ、肩を持たなかった相手が殺されるという後味の悪いクエスト。
唐突にウィッチャー3の空気感を持ち込まれてどんよりする。
個人的には慣れっこだけど、たぶんこのゲームのプレイヤーが求める展開ではなさそう。
さいごに
メインストーリーの物語だけを抽出すると、大筋としては非常にスペクタクルで興味深いのだが、如何せん尺不足だったというのが正直なところ。
とはいえ、その尺不足で味気ない部分も終始笑って許せるくらいにゲームとして楽しめたからこそ、感想を書いているわけで、一言でいえばとても楽しかった。おすすめできる。
間違いなく続編へと続く物語なので、最終的に綺麗にまとまってくれたら嬉しいな、と思う。
物語がだいぶ風呂敷を広げてしまったので、今まである程度繊細に描かれた対比の物語が、尻切れトンボにならないといいな。
特に、主人公たちの成長する文明と、一度解体した文明の対比は、この物語の大きな魅力だったのだ。成長過程の文明が、成熟し過ぎた文明に触れていく過程というのが、繊細に描かれることを、個人的には期待している。