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レビュー 文房具

これ一本あればイイ。PILOT CUSTOM823 レビュー

書くことだけに集中したい。今向き合っている文章だけに集中したい。
そんなときにはいつもこれ。PILOT CUSTOM823。
万年筆。今となっては不便な筆記具だ。
くるくるキャップを回して外さないと書き始められないし、インクの充填は面倒。手も汚れる。
決して万人にオススメできるような道具ではない。

ただ、この万年筆にはこれらを補って余りある魅力がある。
3年間毎日使い続けた感想を紹介していこう。

P(プランジャー)式本体吸入機構

国内メーカーの通常ラインナップの中でもおそらく唯一の本体吸入式。
プランジャーというのは、トイレが詰まったときに使うあのスッポン…じゃなくて(いや、間違いではないんだけど)、ポンプのこと。
上の写真、シリンダーを引き上げた状態だが、上げるときはインクも空気も通し、押し下げるときはインクも空気も通さない。つまり、タンク内が真空に近い状態になり、その負圧が開放された瞬間に、インク瓶に浸かっているペン先からジュコッと一気にインクを吸い上げるのだ。
加えて、このシリンダーを完全に押し下げると、ペン先へのインク流入を遮断することができる。
つまり、飛行機に乗れるのである。
何言ってるの?って顔してるそこのアナタ。
全世界の胸ポケットとか大切なカバンの中身をインクでブルーブラックにしたみんなを代表して言わせてもらうけど万年筆って飛行機に乗れないんだよもっと言うと気温の急激な変化にも弱くて寒い冬にキンキンに冷えた外からあったかい家に帰ってきたらマイスターシュテック149に入れてた限定パーマネントグレーがお気に入りのノートにドパァッてなった私なんかからしたらなんだよこれ最高かよって機能なんですよ!

失礼しました。
おそらく、主流のカートリッジ式やコンバーター式が大容量化されない理由の一つが、この、万年筆が気圧変化に弱いというところにあると思われる(まぁ規格とか需要の問題が大部分だろうけど)。

インクを充填する様子も面白いので興味のある方は公式サイトを御覧ください。

いつでも確認できるインク残量

多くの本格的な国内メーカー万年筆は本体がスケルトンではないため、インク残量が確認できない。
これが実は結構なストレスなのだ。家を出るときにインク残量が気になって、キャップを外し、インク残量を確かめ、まぁ大丈夫そうだけど、せっかくだから補充しとくか。
みたいなこと、多々あるのである。
CUSTOM823は常にインク残量が見えるので、ふと気になって万年筆を分解する必要がない。

圧倒的なインク容量

この万年筆、なんと2.1mlのインクが充填可能なのである。
詳しくは下の記事に書いてあるが、三菱のジェットストリーム0.7を2日で使い切る私でも、1週間近くインクが持つ。
インクを充填するのが好き、という万年筆ユーザーも多いようだが、私は面倒くさがりなためこれが嬉しい。
Fニブを使用しているため、スーパカブ125並みの燃費である。どこまででも走っていけそうな安心感だ。

万年筆の重さを量ってみよう【PILOT CUSTOM823】

14K 15号のニブ(ペン先)

CUSTOM823にはF(細字)・M(中字)・B(太字)の三種類のニブが容易されている。
私が使用しているのはFニブで、手帳の5mmマス目に書いても字が潰れない。

14kというのは14金の意味で、18金よりは硬い書き味、などと言われるが、ニブの材質による書き味の違いがわかる人って本当にいるのだろうか。
おそらく書き味に一番影響するのは、ニブの大きさや形状、厚み、であって、材質の違いによる差は無いと言って問題ないと思う。

よく見ると切り割りが少しズレてる。まぁいいか。書けるし。

素晴らしいクリップ

もはや私の身体の一部となっているCUSTOM823。家にいるときですら常に胸ポケットに刺さっている。
どんなペンにもついているこのクリップ。
1000日以上、おそらく10000回以上胸ポケットに抜き差ししているが、全くへたらない。安いボールペンだったら何十回折れてるかわからないところだ。
そして、不意に落ちたりすることがない強力なクリップにも関わらず、そこそこ厚い生地でもサクッと差し込める。
一体どうなってるんだ。
このクリップはPILOTの一定クラスの万年筆全てについている。

2つの欠点

手放しに崇め奉りたいCUSTOM823だが、2つだけ残念な点がある。
独自のプランジャー機構ゆえ、長期使用にいくつかの問題が発生しているのだ。
このネジが摩耗する。使用期間3年目に突入する1本目は、使用するたびにこの尾栓を開け閉めしてたこともあるのだろう。
これは仕方がないことなので、そのうちメーカーメンテに出そうと思う。
ということで(どういうことで?)、メンテに備えもう一本CUSTOM823がうちにやってきた(歩いてきた来たみたいな物言いだけど買ったんだろ)。
もう一つは、内部の金属軸と、ゴムパッキンの潤滑剤切れである。
分解しなくても金属軸にはシリコングリスを塗布することができるが、内部のパッキンは分解する必要がある。
この潤滑剤が切れてくると、だんだん吸入に失敗するようになる。
分解は難しい作業ではないので、自分でやろうかと思ったが、ネジの摩耗のこともあるので、私はメーカーメンテを利用するつもりだ。
気軽にメーカーのお世話になれるのが国内メーカーを利用する最大の利点である。

この万年筆をオススメできる人

冒頭で述べた通り、万年筆自体、万人にオススメできる道具ではない。
ではどんな方におすすめできるのか。
すでに万人筆を持っている方、そうでない方に関わらず、長時間の筆記をする機会のある方には一度使ってもらいたい。
万年筆の欠点は、キャップのつけ外し、インクの充填が面倒なことだ。
しかし、キャップを外したが最後、何時間も連続で紙に向かうような人にはこのCUSTOM823はおすすめできる。

いつも身につけていると、全体的に傷だらけになるし、刻印なんかは少し剥げてくる。

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