ヴァーチャルフォトグラファー(Virtual Photographer)のみなさんも、まだそうでない方もこんにちは。
今回も写真の画像編集解説です。
前回の記事
目次
はじめに
今回は画像編集のおはなしの四回目。
前回はAdobeが提供しているLightroom classicというソフトを使って、「マスク」と「修復」という項目について説明しました。
今回、最後に説明するテーマはモノクロ現像です。
現像に関する基本的な操作は以前の記事を参考にしてください。
モノクロ写真の魅力
モノクロ写真というのは白と黒、つまり明るさの情報のみで構成される世界です。
私たちの目に映る世界というのは、詰まるところ光と、光に反射した色の集合です。適度な光が当たればその物体の色を認識することができ、光が当たらなければ黒い陰になる。これは写真も同じです。
これまでの連載の中でも、黒つぶれ/白トビについてお話したことがありましたが、つまり一番明るい状態は色も見えない真っ白な状態、暗すぎれば真っ黒の世界になってしまうわけで(真っ白と真っ黒だってもちろん色ではありますけど)赤や青や黄などの色というのはすべて、白と黒の間にあるものというとらえ方も可能なわけです。
どれだけカラフルで美しい写真も、モノクロに変換するとのっぺりとしたグレー一色の写真になることもあります。これは、色は違えど明るさが同じということですね。
また、単調でぱっとしなかった情景が、モノクロになることで印象深い写真になるなんてことはよくあります。
なんとなくいいなと思って撮ってみたけど、後から見たらいまいちグッと来ない。そんな写真は消してしまう前にモノクロに加工してみると息を吹き返すかもしれません。これは、なんとなくいいと感じた理由が、色ではなく、明るさの加減やバランスにあったからでしょう。
明るさの情報のみで構成されるからこその表現。この感覚をつかむと、写真を撮影するときに、今まで自分の中であまり意識してこなかった、写真撮影において重要な要素を感じられるようになると思います。
それでは、実際に画像の加工を通して、モノクロの世界をのぞいてみましょう。
自分のモノクロ撮影の方向性をつかむ
モノクロ現像を始めてみよう、と思ってもゲームによってはモノクロモードがないことがあります。
頭の中でカラーの情景をモノクロ変換するのは、慣れないうちはなかなか難しいです。イメージをつかむために、いくつかサンプルを見てみましょう。
もともとカラー現像するつもりで撮影したフォトですが、モノクロに変換するとだいぶ印象が変わりますね。
そもそもサイバーパンクな色を表現したいと思って撮影したので、意識が「カタチ」よりも「色」に向いてるんですよね。その色がなくなったことで、主張が薄くなってしまっている気がします。
ちょっと現像で編集をかけてみましょう。
どうですかね。カラーで現像したら露出アンダーが目立つかもしれませんが、モノクロであれば適度なメリハリとなって画像全体が少し引き締まりました。露出の考え方も、カラーとモノクロでは少し切り替えが必要なことがわかると思います。
コレはどうでしょう。やっぱりコレもカラー現像前提で撮影したものですが、個人的には色を捨てる必要はなかったかな…という感じです。
もしかすると、色に頼り過ぎた構図なのかもしれません。
少し編集してみます。
背景を明暗で整理したことで、少しスッキリはしましたが、やっぱりモノクロで現像するなら撮影時から構図を考えておけばよかったかな、という感じがしますね。
このフォトはもともとモノクロ現像するつもりで撮影したものです。色数が少ないため、イメージもつきやすいかもしれません。あえて露出オーバーにして余計なものを全部はぶいておいたので、編集で追い込んでいきます。
実際の撮影時の現像イメージを適用してみるとこんな感じ。周辺の光量を落として、より被写体を強調してみました。
これも明確にモノクロを想定して撮影したフォトです。人物の動きがモノクロになることで強調されるような構図を意識してみました。
撮影時のイメージを適用するとこんな感じです。このフォトも少しトリミングして、構図を整理してもよいかもしれませが、へたに色情報が入っているよりもスッキリしたと思います。
文章や音楽と同じように、写真においても、余計なものをどれだけそぎ落とすかという視点は大切です。
写真においてモノクロ化するというのは「色を失う」という後ろ向きな考えではありません。自分が「表現したい」と感じていたものは何なのか。その「表現したい」に果たして色は必要なのか。モノクロにすることで、その「表現したい」が強調できるのではないか。
こういった発想や視点は、写真撮影においてつねに重要で、たとえモノクロ撮影をしないとしても、自分の方向性のようなものを見つけるきっかけになるかもしれません。
色を使ってモノクロ現像をする
最終的にモノクロでアウトプットをするからと言って、撮影時にモノクロモードで撮影する必要はありません。
むしろカラーで撮影しておくことで、より柔軟な編集が可能になるので、今回はカラーフォトでモノクロ現像をする方法を説明しようと思います。
こんなフォトを用意してみました。
カラー写真にすることを前提に全体の彩度と輝度を調整したのですが、モノクロにするとどうなるでしょう?
「基本補正」の「色表現」からカラー/白黒を切り替え可能です。
私としては、サイバーパンクな背景は残しつつ、炎と人物が際立っている仕上がりにしたいのですが、背景の緑色と炎の明るさが同じくらいだったため、なんともぱっとしない感じになってしまいました。
こんな時に使用するのが、モノクロ現像時に現れる「B&W」の項目です。
レッドやグリーン、ブルーなど、元のカラー写真時の色ごとに明るさを調整できます。PC版では、黄色い矢印の部分をクリックしてから写真の任意の部分を選択しつつ上下にドラッグすると、選択部分と同じ色調の範囲の明るさを直感的に編集可能です。
とりあえずこんな感じにしてみました。元のカラー画像でグリーンだった背景を暗くし、炎のオレンジだった部分を明るくすることで、画像全体を引き締めつつ、炎を強調できたのではないかと思います。
最後に細かい仕上げをしていきましょう。
最終的な加工では、これまでの連載で説明してきた編集項目を使い、コントラストを大きく上げ、カラーノイズを低減しつつ、「テクスチャ」「明瞭度」「かすみの除去」を微調整し、最後に少し粒度を加えてみました。
どうですかね。だいぶモノクロフォトとして見栄えが良くなったのではないでしょうか。
ただモノクロ化しただけの画像と、編集後を比べると違いが判ると思います。もちろん前回解説した「マスク」などの機能を使えば、より突き詰めた調整も可能です。
こうした作業を繰り返していると、自然と色の中の輝度、明るさが撮影時に感じられるようになります。こういった経験は、カラー撮影をするときにも必ず活きてくるので、ぜひやってみてください。
コラム【モノクロ撮影を通して見えてくるもの】
そもそも色って何なんでしょうね。
私が見ている赤色と、あなたの見ている赤色って同じ色なのでしょうか。なんて考えたこと、ありませんか?
画像編集の連載をしてきて、色についてもいろいろと書いてきたわけですが、実は私自身、まだまだうまく言語化できない部分がたくさんあります。
色について悩んでしまったときは、私はよくモノクロ撮影をしています。色について考えたくないからモノクロを撮るのではなく、色のない世界に浸ることで何かが見えてくる気がするんですよね。まぁまだまだ見えてこないわけですが。
かつてはモノクロ撮影しかなかった写真の世界も、今ではカラーが基本となり、モノクロは一つの表現の選択肢となりました。これは、どちらも選択可能ということでもあり、選択しなければ使う機会のないものになってしまったということでもあります。
モノクロの世界というと、ただ色を差し引いたものに思われがちなのですが、実際に自分で撮影してみたり編集してみると、そうでないことがすぐにわかると思います。モノのカタチや構図が強調され、先鋭化されるなかで、カラー写真とは違った視点や感覚を求められる。
すぐには慣れないかもしれませんが、チャレンジしてみると新しい扉が開かれるかもしれません。
長く撮影をしてると、ふと自分が何を撮りたかったのかわからなくなることがあったりします。これは写真に限った話ではないですけどね。
この連載の一番最初の記事にも書きましたが、VPを長く楽しむために、私は「自分の撮りたいものを知る」ことが大切だと考えています。
自分がシャッターを切るとき、VPであればフォトモードを開いてスクリーンショットを撮るとき、何を思ってその瞬間を切り取ろうと思ったのか。
何のために、誰のために、何を残し伝えたかったのか。
すぐには答えは見つからないかもしれないし、見つかったとしても自分の中で常に変化していく可能性のあるものなのですが、モノクロの世界を垣間見ることで、何かのヒントになればうれしいです。