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カメラと写真 レビュー 量ってみた

NIKKOR Z 40mm f/2は罪深い餌撒きレンズ【実写レビュー】


NIKKOR Z 40mm f/2をZ30と同時購入して3ヶ月使ってきたので、ぼちぼち所感を残しておきたいと思います。

最近40mmレンズって流行っているんでしょうか。RICOH GRⅢxも40mmですし。
Nikonのフルサイズ一眼対応純正レンズで、過去に40mmってなかった気がするんですよね。M型Leica(ライカ)などの、レンジファインダー機についているイメージが強いです。
MINOLTAのカメラで使ったことがあるのですが、40mmレンズって実は結構使いやすい焦点距離だと思っています。35mmのように、なんとなく撮ると何を撮ってるんだかわからない漠然とした写真になったり、50mmのような狭さはなくてとても使いやすい。RICOH GRⅢxで採用されているのもうなずけます。
とはいえ、今回はAPS-C機のZ30に装着しての記事になるので、基本的には35mm換算60mmのレンズとしてのレビューとして読んで頂ければと思います。

購入経緯

私のプライベートのメイン機材はNikon D850+ AF-S NIKKOR 58mm f/1.4Gです。
ただ、どうしてもフルサイズ一眼レフは大きくて重いので、普段使いのコンパクトなセットが欲しかった。
この時点で「あーなるほど」となった方はもう読み飛ばしてもらって大丈夫です。
カメラ屋の店員さんに上記の旨をお話をしたところ、「あーじゃぁコレでいいんじゃないですかね」と手渡されたのがこのNIKKOR Z 40mm f/2です。
簡単に説明すると、Nikon D850というカメラは4500万画素超の高画素機でJPG+RAW撮影で一枚70MB前後のカメラです。そして、AF-S NIKKOR 58mm f/1.4Gというレンズがいわゆるクセ玉と言わるタイプのレンズで、現代のレンズとはちょっと違った写りをするレンズなんですよ。このレンズに関しては別の記事を参考にしてください。

Nikon AF-S NIKKOR 58mm f/1.4Gの重さを量ってみよう【実写レビュー】


フルサイズ機であるD850に対し、今回同時購入したZ30はAPS-C機なので、40mmは35mm換算で60mmになります。F値は1.4から2.0に落ちますが、大切なのはコンパクトさです。画素数としても半分以下になるので必要十分かつ使い勝手がよさそう。

もっと言うとフルサイズ機と同等の写りが実現してしまったらD850の立つ瀬がないので、これぐらいがちょうど良い。というのもありました。
そしてなにより、このレンズもいわゆるクセ玉と言って差し支えないところがあるんです。写りの方向性は廉価版AF-S NIKKOR 58mm f/1.4Gという感じ。ドンピシャです。

実写サンプル

画像をクリックorタップすると拡大表示されます。トリミング無し、露出以外の補正なしです。

ISO100 SP1/200s f/2.0

ピントは手前の壁の落書きに。奥の人まで距離は10m弱くらいでしょうか。おそらくf/2.8だとボケ量が足りないと思うので、やはりf/2.0の明るさは嬉しいですね。単焦点を持つ意味が感じられて嬉しいです。

ISO1250 SP1/200s f/2.0

被写体と背景の距離がこれくらいだと、背景のボケ方が少しかたいです。

ISO2000 SP1/125s f/2.0

さらに離れるとこんな感じ。スマホサイズだと背景のボケは感じられないかもしれないですね。まぁでも60mmのf/2.0はこんなもんです。

ISO2000 SP1/320s f/2.0

背景をある程度ボカしたければこれくらい寄る必要があります。

ISO320 SP1/2500s f/2.0

個人的には、被写体と背景ボケのバランスとしてこれくらいの距離感が好きです。背景に多少のザワつきは感じますが、レンズの「味」として楽しめる範囲だと思います。

ISO200 SP1/4000s f/2.0

この60mmのパース感が好きなんですよね。50mmでも85mmでもないこの感じ。

ISO100 SP1/3200s f/2.0

前ボケもイイ感じですね。後ボケにかたさの片鱗はあるのですが、人工物であったり、比較的大きめのモノだったりするとあまり気にならないです。

ISO100 SP1/1600s f/2.0

正面に夕陽を入れて撮影。さすがにゴーストや偽色が出ますけど、コレはまぁ仕方ないって感じです。むしろこの価格でこの程度で収まってるあたり、逆光耐性としては優秀と言ってもいいと思います。もしかするとレンズの枚数が少ないことが良い方向に働いているのかも。

ISO100 SP1/3200s f/2.0

人の顔が判別できないよう、MFで前ピンにして撮影。レンズ側にAF/MF切替スイッチがないので、本体側で対応する必要があります。背景の緑のボケ方がなんだか懐かしのオールドレンズな気配を感じます。

ISO1000 SP1/60s f/3.5 スピードライト使用

肉のハナマサで買ってきた安いステーキ肉。f/2.0だと浅すぎるので、3.5まで絞ってます。レンズ自体もそれなりに寄れるので、単品の撮影であれば外出先でもテーブルフォトに使えなくもないと思います。

ISO250 SP1/500s f/3.5

サッと取り出してパッと撮るストリートスナップではf/3.5くらいまで絞っておけばそれなりに安定感が出ます。開放で撮影してると思わぬボケ方をしたり、Z30だとSP1/4000が限界なので、絞り優先オートで撮影しててまさかの露出オーバー、みたいな事故が頻発したり(笑)

ISO250 SP1/800s f/2.0

個人的な感想としては、自然の風景よりも人工物の方がイイ感じの風合いを出せるレンズな気がします。街中のスナップが楽しいレンズです。

ISO320 SP1/250s f/2.0

うーん。ボケの輪郭がザワワザワワしちゃいますね。個人的にはそこまで嫌いではないんですけど、AF-S NIKKOR 58mm f/1.4Gのボケ味に慣れてると「うーん…」ってなることが多いです。もともと廉価版AF-S NIKKOR 58mm f/1.4Gというつもりで購入したので文句はないんですが、このあたりが自分の中で勝負レンズになり切れない要因だったりします。普段使いには十分。でも本気の時はD850を持ち出す意味があるのがバランスとしてちょうどいい。

ISO100 SP1/800s f/8.0

f/8.0まで絞ると、シャキッとした写りになります。でも、少し芯が太いというか、Zレンズとしてはワイルドな写りな気もします。

ISO100 SP1/250s f/2.0

限りなく最短距離で撮影。ピント面は薄いしややユルいので使いどころは考えないといけないですが、背景をある程度整理してから撮影するといい感じですね。

ISO320 SP1/160s f/2.0

紅葉の中に季節外れのセミの抜け殻が残っていたので撮ってみました。背景がうるさくなるかな…と思いきや、イイ感じですね。こういう描写を狙って切り取れるようになったら、このレンズは手放せなくなる気がします。

ISO1250 SP1/250s f/2.0

玉ボケテストです。木に巻き付いたイルミネーションを撮影してみました。APS-Cということもあるとは思いますが、口径食の影響も少なく、四隅の方までかなり円形に近いボケ方をしていていいですね。フルサイズ機だと、もう少し口径食の影響が出るのかもしれません。

結局どんなレンズなのか

一言紹介するなら、Zマウント対応の安価&コンパクトなフルサイズ対応変態40mmオールドレンズ。
変態とか書いてますけど、ほめ言葉です。個人的にかなりお気に入りのレンズなんですが、誰にでも手放しでオススメするレンズかというと難しい部分があるのでそのあたりを慎重に説明していきたいと思います。

長所短所をざっくりまとめましょう。

長所:
・絞ればシャープな描写
・許容範囲の色収差
・APS-Cでは歪曲も周辺減光もほぼ感じない
・優秀な逆光耐性
・AFは静かで正確、かつ早い

短所:
・絞り開放付近のふわふわした描写
・見た目が安っぽい(実際安い)
・光学手ぶれ補正非搭載
・スイッチ類はなし
・フードが付属しないし別売りもない

ちょっと詳しく説明していきましょう。

見た目


前玉はかなり小さいですね。特に記載もないのでコーティングも無いと思います。軽量&安価なのはいいのですが、保護フィルターかせめてフードをつけたいところ。
でも純正フードは無いので、自分で探すしかありません。


仕方ないので、私はフィルム時代に使用していた金属フード(HN-1)を付けてます。保護用&ケラれないのでとりあえずOK。


最新のZ機に傷だらけのフードがコメントしがたい雰囲気を醸し出してますが、まぁ応急措置です。


スイッチ類は一つもないです。AF/MF切替スイッチが無いので、オートフォーカスをシャッターボタン半押し設定にしてると少し面倒ですよね。
私は普段から親指AF設定にしてるのであまり不便さは感じていないのですが、メニューからわざわざ切り替えるのはちょっと辛いです。
フォーカスリングは太くて適度な抵抗がありつつ、変な遊びもないのでかなり使いやすいです。


レンズマウントもプラスチックっぽいです。コレはちょっと初体験なので、耐久性はまだわかりません。
レンズマウントだけでも金属だったらよかったな、というのが正直なところ。
後玉、というんですかね?気を付けないと触ったりぶつけたりしそうで、レンズ交換は少し気を使います。
安価なこともあり、日常的にラフに使いたいのだけど、意外と気を使わざるを得ないのが、ちょっと残念。

重さを量ってみよう


裏蓋、レンズキャップ、フィルターなしで166.8g。メーカーのスペック値より軽いですね。
本当に軽すぎてちょっと不安になるレベル。

明らかにZレンズの写りではない

「Zレンズに外れ無し」なんてフレーズを見聞きするんですけど、アレはS‐LINEレンズのことをさしていると思っています。
とはいえS‐LINEレンズは当然のように高価でデカくて重いんですよね。安くて小さくて軽いのもまた一つの正義です。
写りに関してハッキリ言ってしまうと、このレンズは他のZレンズのような開放からパキパキの優等生な写りをするレンズではありません。
NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VRの方がそつのない写りをします。


このレンズのウリでもある開放の扱いは難しいです。開放f/2.0というのがやや中途半端で、ボケに逃げきれない場面が多く、いっそf/3.5くらいに絞った方がよい場面も多いと思います。


微ボケの騒がしさは常に制御が難しいです。私の場合は自然の緑を背景としたときに気になることが多いです。とはいえ、ある程度絞ってもシャープとは言い切れないというか、なんとなく線の太さが気になったりして。ボケの縁取りもやや強いので、うまくボケ同士がつながらないと綺麗にまとまりません。
ピント面と背景の距離など、様々な要素はあるのですが、いずれにしても風景なんかを撮るときは拡大してしっかり確認した方がいいですね。
帰ってきてPCモニタで確認してみたらアレレレ?となることが多かったりします。
被写体と背景との距離や絞りの設定、画角内の整理など、総合的な処理能力を常に試されるレンズという印象です。

これは本当に撒き餌レンズなのか?

ヨドバシはじめ、いくつかの店舗のNikonコーナーを見てみたのですが、このレンズ、だいたい入門機?相当のZ30やZfcの脇に置かれてるんですよね。
明らかに単焦点レンズデビューにオススメの一本、的な位置付けっぽいんですよ。小さい、軽い、安い。手頃な入門レンズっぽいんですけど、実際はかなりのじゃじゃ馬です。
カメラ本体の性能の進化と、そつないレンズ性能のおかげで忘れかけていた、「自分の知識と経験で機材の性能を引き出す大切さ」を思い出させてくれるレンズです。
入門の意味合いが、令和というより昭和な感じ。「シャッター切れば気軽に本格的な写りが楽しめますよ♪」ではなく「とりあえずこのレンズで、まともに撮れるようになるまで帰ってくんじゃねぇぞ」みたいな。
ただ、写りに関しては昭和な雰囲気を残しつつも、防塵防滴&インナーフォーカスで、逆光耐性が優秀なあたりは、やっぱり現代のZレンズなんですよね。
いろいろ度し難いです。

妥協して買うレンズではない

なんとなく否定的なレビューになっていますが、私の中ではZ30用のメインレンズなんです。
そもそも他の多くのZレンズと比較するようなレンズではなく、このレンズの写りが好きなんだ、という意思のもとに選ぶ一本だと思います。
実際、この写りは他のZレンズでは出せない「味」と「クセ」があるのは間違いないので、気に入ったのなら他に現行純正レンズでは選択肢がなさそうです。
レンズ性能を数値として定量的に評価することが一般的になってしまったこの時代に、言語化の難しい「味」をぶち込んでくるNikonというメーカーはやっぱり好きです。正気を疑いますね。
58mmの時もそうでしたが、メーカー内にそういう勢力が残存しているんですかね…個人的には嬉しいのですが(笑)

基本的な使い方

最短撮影距離は0.29m、撮影倍率は0.17倍です。フルサイズ機に取り付けるなら、それなりに寄れるわりに意外と倍率は低い。マクロ的な要素は皆無です。
フルサイズ機では万能なスナップレンズ。APS-C機に取り付ければ軽めのポートレートや物撮りにも使えます。
f/5.6くらいまで絞ればある程度様々な状況で安定した写りになるものの、開放付近の描写はかなりじゃじゃ馬です。いっそしっかり絞った写りもこまめに確認することをおすすめします。
ピント面も薄く手振れ補正もないため、被写体に寄る場合は気を付けて運用する必要があるでしょう。
とにかく様々な状況、設定で撮りまくって自分のモノにしていく他ありません。

楽しんで使うために

明るめの単焦点レンズってどうしてもとりあえず開放で撮ってみたくなるのですが、このレンズの開放f/2.0はとにかく「クセ」が強いので取り扱い注意的な部分があります。
困った時のとりあえずの開放というより、常に絞るか開くかの選択を迫られます。S-Lineのようにf/1.2くらいあれば逃げ切れるのかもしれませんが、f/2.0というのがミソなんですよね。ボケきらない場面が多い。
このあたりの特性を手懐ける楽しさに昇華できるか、それとも単純に不便、物足りないと感じるかが、このレンズを使い続けるかどうかの分かれ目になるのだと思います。
実際この10年間、Nikonのデジタル一眼のレンズをいろいろと触ってきた中で一番難しさを感じるレンズです。ハッキリ言ってクセ玉と呼ばれるAF-S NIKKOR 58mm f/1.4Gより気難しい。入門レンズと高をくくって手にすると、普通に振り回されます。
それでも、思わぬところでクリティカルな一枚が撮れてしまったりするので、なんだかつけっぱなしにしたくなってしまうんですよね。
Z30と組み合わせると、常に首からぶら下げていても苦ではない重さなので、外出時は本当に常に持ち歩いています。設定をいろいろいじりながら撮って、帰ってきてPCモニタで確認しては「うーん」ってなったり、「おおっ!」ってなったり、なんだかフィルムカメラで必死に写真を覚えていた頃を思い出させてくれる不思議な最新レンズです。
Zレンズに失敗のない優秀さを求めるなら、S-LINEのレンズを選びましょう。でも、深く考えなくても瞳にバチっとピントが合って、解放からキレキレの写真ばかり撮れてしまう昨今、たまにその精細さに疲れちゃうことってありませんか?
そんな方には、「あえて」おすすめしたいレンズです。気になってしまったのなら是非、ということで。

さいごに

さいごにちょっとオマケです。
最近、デジタル一眼カメラを持っていてもPCは持っていない、という方にちょくちょくお会いします。
ちょっとびっくりしたのですが、バックアップは専用機にとりつつ、スマホで現像&SNSに投稿したりするそうなんですよね。
確かにスマホだけでかなり本格的な写真編集は可能で、最終的な出力先がSNSなのであれば、中途半端なPCモニタで確認するよりもiPhoneあたりで確認しながら編集してしまうのは合理的なのかもしれないと妙に納得してしまいました。
で、スマホの画面サイズで見ていくことを前提にするならば、このレンズのクセのネガティブな部分って実はそこまで気にならないのかもしれないと思ったんですよね。
実際、このサイトのアクセス状況を見てみても、モバイル端末(たぶんスマホ)が6割強。PCは3割であとはタブレットとかみたいです。
そう考えると、純粋にこのレンズの「クセ」って「エモさ」的なものとして許容できることが多いのかもって思ったりしたわけです。
等倍に拡大してあーだこーだ言うより、スマホの画面でパッと見た感じ「イイ感じじゃん!」っていうほうが、実は純粋に写真を楽しめているのかもしれないなって思ったりする今日この頃です。

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