ヴァーチャルフォトグラファー(Virtual Photographer)のみなさんも、まだそうでない方もこんにちは。
今回も写真の画像編集解説です。
前回の記事
目次
はじめに
今回は画像編集のおはなしの三回目。
前回はAdobeが提供しているLightroom classicというソフトを使って、主に「レンズ補正」「効果」という項目について説明してみました。
今回はいかにもレタッチ的な部分。「マスク」と「修復」について解説していきます。
現像画面についての基本的な説明は、前々回記事を参考にしてください。
マスク
マスクの機能では、写真に写っているものから、被写体や空、背景などを自動的に抽出し、その部分のみを編集することができます。
また、ブラシや線形グラデーションなどの機能を使うことで、思い通りの加工も可能です。
実際に見ていきましょう。
現像画面でマスクを選択すると、「被写体を選択」「空」「背景」などの項目が選択できます。
今回は「被写体を選択」を使ってみましょう。
被写体として、人物が選択された状態です。
選択部分についた色は「オーバーレイを表示」のチェックを外せば消すことも可能です。
この状態で右側の編集項目の設定を変更すると、選択された被写体部分のみに編集結果が適用されます。
また、「反転」にチェックを入れることで選択範囲を反転することが可能です。
「追加」と「減算」を使用すると様々な方法で、選択範囲を追加したり、削ったり(正確には、効果を適用する強度を強くしたり弱くしたり)することができます。ブラシあたりを使用すると、選択範囲の細かい修正が可能ですね。
この状態で彩度を落とすと被写体のみモノクロにする、なんてことも可能です。
今回は試しに背景のみにグラデーションで編集結果を適用してみましょう。
反転した背景に減算で線形グラデーションを加えることで、画像の背景上部のみにグラデーション効果を加えつつ選択範囲を絞ることができました。この選択範囲に対して、露出マイナス補正を加えると…
なんだかどんよりしましたね。
よく見ると、今回の被写体は右手部分の被写体選択が甘いのですが、これは追加や減算を使って調整してもよいですし、撮影時に被写体と背景を明確に区別できるような撮影をしておくと、編集が楽になります。映画の撮影で合成編集をするためにグリーンの背景を使っているのを見たことがあるかもしれませんが、アレも目的としては同じです。
修復
修復の機能では、「コンテンツに応じた削除」「修復」「コピースタンプ」の3つのモードが使用可能です。
いずれのモードも、写真内の同じような背景部分をコピーして、写りこんでしまった不要物の上に貼り付けることで、不要物を除去することを目的としています。
3つの違いとしては、「コンテンツに応じた削除」はAIが自動的に選択した不要物を除去してくれる機能。「修復」は自分で任意に選択した背景部分を使って、不要物を背景になじませながら除去する機能。「コピースタンプ」は「修復」と同じ動作ですが、“なじませる”ということをしないので、用途は限られます(違う用途に使えるかも)。
実際に使ってみましょう。
次のフォトの机の上にあるカードを「コンテンツに応じた削除」で消してみようと思います。
一発で消えちゃいましたね。こういった、除去したい対象の背景と同じようなサンプル箇所の多いフォトでは、「コンテンツに応じた削除」は優秀です。
では次はちょっと大きいものを消してみましょう。壁の落書き。エッジランナーズのやつですね。消しちゃいましょ。
「コンテンツに応じた削除」では、対象が大きすぎるのかうまく消せませんでした。ということで、「修復」を使用してマニュアルで編集してみます。
こんな感じで、選んだ対象範囲が修正箇所に適用されるわけです。
このあたりがよさそうですね。
どうでしょう。壁に模様があるのでよく観察するとわかってしまうかもしれませんが、この「修復」操作を繰り返すだけでもかなりきれいに仕上げられます。
今回はわかりやすく大きな対象を消してみましたが、実際には物撮り撮影で写ってしまったホコリなんかを除去するのにとても便利な機能です。
コラム【どこまでがレタッチか】
写真編集のシリーズも三回目にして、ついに写っていたものを消してしまうところまで来てしまいましたね。
写真の大掛かりなレタッチというのはひと昔前までは特殊な技術、もっともっとさかのぼれば一種の才能がなければできないようなものでしたが、今となっては誰もが意識せずにできるようなものになりました。
AdobeのPhotoshopが開発されたのが1988年で、19世紀の半ば、本格的にカメラが普及する以前から、写真のレタッチの歴史は始まっています。
こういった基礎的な記事も、数年、もしかしたら数か月で古い情報になってしまうかもしれないし、10年後には古の不便な技術となっているかもしれません。
レッタチというのはつまるところ、自分の希望を叶えるためのものです。
自分の見た目をより良く残したい。目を大きく、肌をキレイに、足を長く。時にはおふざけや悪意をもって事実の改ざんに利用されたりすることもあるでしょう。事実というのが、なんなのかは置いておいて、ですが。
写真が撮影されたとき、ファインダーの向こうに何があったのか、というのは撮影者にしかわからず、それをどのように現像して他者のもとに届けるかは、基本的に撮影者の自由です。
自由というのは自分の意思が試されてしまう場なので、技術や知識が必要なのはもちろんですが、自分が一体どんなものを作りたかったのか、作り続けたいのか、ということが結局いつまで経ってもつきまとってしまうんですよね。