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おはなし カメラと写真 レビュー

こどもの撮影に適したレンズを選ぶときに私が考えていること

雨上がりの公園を、娘が駆けていく。
ひどい転び方をしたまま、なかなか立ち上がらない。
近づいていくと、私にしがみついて一生懸命泣き始めた。
仕方なく抱き上げて歩き出す。
雨に濡れた若草と土の香りに、泣く人の強い匂いが混じって、潤んでいる空気は景色の色を変えているような気さえする。
私はこんな空気感を写真に残したいのだけどな、などと考るのだが、今のところ、そんな写真は撮れたことがない。

一般的に、こどもの写真ってなんだろう

基本的には記録であり、思い出であり、作品でもあって、誰かへの贈り物にもなる。
撮影の技術としてはポートレートであり、時に動きものでもあり、こどもの作品を物撮りをすることもあればスナップでもある。
こどもの成長に伴って、必要な機材も変わってくる。まぁ、こだわるのなら、だが。

こどもは人間なのだから基本はポートレートだろう。
ポートレートには85mmから135mmなどの中望遠レンズが良いと言われる。少なくとも、良いと言っている人と同じような写真が撮りたければ、これは正しい。
とはいえ、写真の大半が背景ボケボケというのはちょっと困る。祖父母や成長したこども自身が見た時のことも考えなくてはならない。
普通の中望遠レンズは最短撮影距離も伸びて狭い室内でも使いづらいし、こども一人だけでなく、家族(複数人)を撮るとなったときに画角が足りなくなることが多い。少なくとも我が家はそこまで広くない。
また、こどもの写真を撮るとなると、人物をいかにきれいに撮影するかに目が行きがちだが、実のところ大切なのは、「こどもがどこで何をしているのか」が大事な場面のほうが多いと思っている。そうなると35mmから50mm程度の焦点距離が良いか、という話になるのだが、まぁそんなに簡単な話ではない。

私とこどもの距離感

こどもの撮影をしたいと思ったときに大切な要素として、こどもとの距離感があると思う。
いかに105mmのレンズでこどもを撮りたいと思っても、こどもがその距離感を不安に感じるのでは意味がない。
私のこどもが自然体で写真を撮らせてくれるのは、お互いに手を伸ばせば手を繋げる距離以上。大声を出さなくても声が届く距離以下だ。
これ以上近づいてカメラを向けるとカメラ慣れしてるとはいえ、自然体を撮影するのが難しくなるし、遠くなると不安にさせてしまう。

日常生活の中で、私と娘の距離感を変えずに理想の画角を保てるレンズの焦点距離は50mmでも85mmでもない。58mmだった。
妻はAPS-C機で24mm(フルサイズ換算36mm)を使用している。最初はズームレンズを渡したのだが、撮影データを見るといつも24mmで撮っている。こどもとの距離感の違いだろう。たいていカメラ目線だ。というわけで、現在妻はAF-S NIKKOR 24mm f/1.8G EDを使用している。
こどもとの距離感というのは人それぞれだ。

こどもとの距離感は、こどもの成長に従って変わっていくだろう。
きっと、少しずつ離れていき、いずれは撮らせてくれなくなる日も来るかもしれない。
でも焦点距離を変える必要はない。距離感の変化がそこに残るならばそれでいい。

私の主な仕様レンズ

左から
AF-S NIKKOR 58mm f/1.4G (413g)
AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G ED (462.5g)
AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR (1127.5g)
AF-P NIKKOR 70-300mm f/4.5-5.6E ED VR (729g)

自分に合った焦点距離

撮りたいと思った瞬間に自分の立ち位置を調整しつつ各設定を操作しながらカメラを構え、ファインダーを覗いてシャッターを切る。
一番時間がかかるのは立ち位置の調整なので、これが必要ないレンズがいい。

私の場合は58mmから70mmなので、どのレンズもこの焦点距離の範囲を含むことになる。
58mmという焦点距離、画角を中心に、基本的にはAF-S NIKKOR 58mm f/1.4Gで撮影。
オートフォーカスの速さが欲しい時や、一緒に捕まえた昆虫を撮影したい時などはAF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G ED。
運動会や発表会などで望遠が必要な時はAF-P NIKKOR 70-300mm f/4.5-5.6E ED VR。
どうしても広い画角が欲しい時、登山などの自由に動き回れない(足ズームが使えない)時は、AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VRも使用するといった感じになる。
AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VRで撮影した写真データを後から確認すると、見事にワイド端の24mmと58mm~70mmの間で撮影していることが多い。
つまり、実質58mm前後のレンズを4本持っているような感覚である。

AF-S NIKKOR 58mm f/1.4Gというレンズ

詳しくは以下のページでレビューしているが、ここではこどもの撮影という観点で性能を考えてみる。

Nikon AF-S NIKKOR 58mm f/1.4Gの重さを量ってみよう【実写レビュー】

その時の空気を残すためのレンズ


今の私にとっては、こどもと一緒に、その時の空気を残すというのが目標だ。
こどもという被写体を包む雰囲気を残すのに、この尖った性能のレンズが一番私の感覚に合っている。
他の所有レンズと比べてしまうとオート-フォーカスが遅いが、ある程度はスキルでカバー。

AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G EDというレンズ

このレンズは、実はこども用に購入したものではない。
マクロで物撮りをしたかったというのと、フィルムのデジタル化をするために購入したのだが、このレンズ、こども撮影用としてもなかなか優秀だということに買ってから気が付いた。

AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G EDの重さを量ってみよう【作例あり】

マクロ専用にするにはもったいないレンズ


60mmというのは、私がメインレンズとして使用するAF-S NIKKOR 58mm f/1.4Gとほぼ同じ画角であり、オートフォーカスがかなり早い。
走り回るこどもにも十分追いつくフォーカスの速さと、ポートレート撮影、スナップ、なんにでも対応できる自然な描写。
解放付近では周辺減光がややきつめに出るが、気に入らなければLightroomのレンズ補正で修正できてしまうし、これといった欠点がない。
マクロレンズなので、こどもの瞳や手などのクローズアップ撮影も可能だ。

AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VRというレンズ

大三元の標準レンズ。
性能としてはもちろん問題なく、とても優秀なレンズだ。
オートフォーカスの速さ、堅牢性、手振れ補正の性能すべてが十二分。

失敗したくない時のレンズ

ある程度使い込めば、常に想定通りの写真が撮れる。良くも悪くも、思ってもいなかった写真が撮れることはまずない。が、なんというか、一言でいうと「業務用レンズ」なのだ。
標準ズームでf/2.8というのがすごい。とはいえ、AF-S NIKKOR 24mm f/1.8G EDとAF-S NIKKOR 58mm f/1.4Gを持ち歩いて自由に付け替えられるような環境では使わないだろう。
あえてこども相手に使用するのは、一緒に山登りをしているときなど、レンズが自由に付け替えられない状況が多い。自分の足場が悪いところで無理しないためにはズームは良い。

AF-P NIKKOR 70-300mm f/4.5-5.6E ED VRというレンズ

主に運動会や、公園で遊びまわっているこどもを撮影するのに使用している。
決め手はワイド端が70mmということ。実際、テレ端400mmくらいあったほうが良いと感じることもあるのだが、ここまでくるとワイド端で70mmを実現するまともなレンズがなくなってくる。
AF-S NIKKOR 80-400mm f/4.5-5.6G ED VRなんてレンズもあるが、私の用途からすると価格に対して重量と焦点距離が釣り合ってない。

付けっぱなしができる望遠レンズ

望遠ズームレンズというのは、重量が1kgを超えることが多いが、このレンズの重量は729g。
今日は望遠レンズをつけていってみよう、と思っていても、実際は標準レンズが欲しくなってしまう私には、ワイド端70mmがあるというのがうれしい。
f/4.5なので、中途半端ではあるが、まぁとっさに標準レンズになるというのは便利だ。
発表会や運動会で遠くの我が子を撮影したそのままのレンズで、集合写真まで撮れてしまうのだから便利だ。

いつかはこどもも巣立っていく

こどもが生まれて、私の機材の方針も、こどもを撮ることを中心に考えるようになった。
これは、すごいことだ。写真を撮ることを趣味や仕事にしていた人間にとって、被写体が変わるというのは「事件」なのだ。
とはいえ、いつかはこどもも巣立つし、写真だって撮らせてくれなくなるだろう。
娘の髪をとかす幸せも、いずれ機会としては少なくなっていくのと同じだ。
まぁ、小学生の間撮らせてくれれば御の字、くらいに思っている。
それに、私の場合、写真はこども以外にも撮る。
だからたとえ、こどもを撮ることが減ったとしても使っていきたいようなレンズが良いのだ。

最後に

こんなことを言ってしまうとおしまいだが、こどもはどんなレンズでも撮れる。どんなカメラだって撮れるのだ。スマホだっていい。
だからこそ、レンズ選びは自分なりの考え方、哲学のようなものが必要になるのだろう。
その哲学みたいなものは、他人に言われて影響されることもあるが、結局自分で作っていくしかないものだ。
だから、上にあげたレンズはおすすめのレンズではなく、一人の父親であり、一人のカメラマンがモゴモゴ考えながら揃えた機材だと受け取ってもらえばと思う。

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